融資ビジネスという銀行の本業が崩壊している昨今、銀行の市場運用部門に対する経営からの期待は大きくなっている。それにもかかわらず、地方銀行の市場運用担当者の大半は、決して恵まれているとはいえない環境に置かれているようだ。彼らの本音を覆面座談会形式でお届けする。

登場人物紹介
A氏:東北地方の地銀行員
B氏:東京で運用する中堅地銀行員
C氏:関西地方の大手地銀行員
D氏:九州地方の地銀行員

──昨年度は、相場環境が厳しく多くの地方銀行の市場運用部門が苦戦しました。反対に本業不振が続き、運用部門に対する経営陣からの期待は高まっていると思うのですが、ここにミスマッチが生じていませんか?

A氏 もう10年以上前からですが、銀行全体の利益目標がボトムアップの要素が皆無のまま作られてしまっているんです。しかも、融資の利益は減少気味。だからその分、運用が利益を作ろうと余計に一生懸命になってしまいます。

B氏 一方で、1円たりとも損を出さないぞと、失敗したときのリスクは許容しない環境を経営がつくってしまった。「買いの決裁権限は部長が持っているのに、売りの権限は常務」とか、構造的に損切りしにくい銀行もある。

 米国債なんかは、価格がずっと下落していたが、時間がたてば昨年末のように価格が戻るときがある。そこで「売って買って」ができていれば稼げたはず。でも、あのタイミングでうまく運用できた地銀の話は聞かない。

A氏 うちは今でも、長年保有していた債券を売るときなどは、部長を飛び越えた経営判断になります。ただ、これが1週間とかかかる。こうした足かせを外してもらわないと、機動的な売買という理想なんか実現できませんよ。

D氏 運用への収益面の比重は増えていますが、やっぱり地元で貸し出しを伸ばしたいというのが地銀の本音です。

 それに伴い、運用部門の負担は減らさないとな、と考えているようですが、これは地銀によって温度差がありますよ。

──よく「市場運用部の部長が全く違う部署から来た」なんて話も聞きますが、現場と上司との折り合いはどうなんでしょう?

C氏 僕のところは、運用部の部長はマーケット経験者じゃないですし、経営陣にもそんな人はいないですね。

 彼らは、現場では常識なのに「アセットスワップって何?」と聞いてくるレベルの素人で、そんな人が決裁権限者なんです。

A氏 よくあるのが、将来的に経営陣に入りそうな営業畑の人が、経営企画畑に行く直前に、2~3年だけ運用部門の部長を経験させるという人事です。あれ、本人もつらいですよ。下の副部長や課長にもうちょっと決定権を持たせればいいのにって思いますが、そうはいかないみたいです。

──運用で巨額な損失を出した地銀もちらほらありますが、リストラなんて話もありますか?

B氏 大きな失敗をした市場運用部の部長が飛ばされ、代わりにリスク統括系の部署から保守的な人材が来た、なんて話は聞くよ。

 で、飛ばされた部長が今度はリスク統括部の部長に回されたという話があり、業界では「あれが、うわさの“たすき掛け”人事ってやつか」なんて話題になっていた。

 あと、大損したら外部人材を入れようとする地銀もある。それで、メガバンクの運用経験者が部長級として来ることもあるけど、そうやって来る人は、もともと運用の腕は大したことないね。

D氏 もちろん、相場観などメガバンクから来る部長に学ぶことはたくさんあります。ただ、地銀によっては運用スタイルが異なるので、「郷に入っては郷に従え」を実行できる人がやっぱりいいです。

──聞いていると、部長は純粋培養ではない人ばかりですね。

A氏 生え抜きで部長になった人の話なんてほとんど聞きませんよ。

──ならば、現場の人はどういうキャリアを描くんですか?

A氏 運用部門だったら、課長や副部長にならなれます。あとは支店長になれたらいい方です。ただ、昇進は法人営業や経営企画の人が優先され、運用の人は課長への昇格も、支店長への昇格も遅い。

 あと、運用部門そのものが、支店で活躍できなかった人が来る場所だと行内で扱われていて、これが本当にダメなんですよね。

 やっぱり、運用部門も当たり前の人事異動の選択肢にしてほしい。運用を経験すれば、支店の現場で金融商品を販売するときも、「金利を語る」ことができますから。

C氏 逆に僕は、頭取と話したときに「運用部門は長くおらんでいい、4~5年でええんや」と言われましたが、同時に「運用部門は一日中座ってるから楽やろ」といった意味合いのことを言われて耳を疑いました。