イノベーション型企業参謀は、幕末の志士たちのような志と目線の高さが必要だ Photo:Seigo Yamamura/Aflo

 本連載第52回では、「イノベーション型企業参謀」の必要性を提案した。

 世界中の経営者は、既存事業を維持しながら、破壊的なイノベーションをもたらす新たな企業に対処し、さらに自らも事業のイノベーションを図れるかという難題に、日夜頭を悩ませている。そんな経営トップに、既存事業の経営とは異なるノウハウが必要なイノベーションの経営についてアドバイスし、先導する存在がイノベーション型企業参謀だ。

 では、イノベーションプロセスにおいて、なぜ企業参謀が必要なのか?

 企業のイノベーションプロセスは既存事業の予定調和的な事業計画と違い、全く予想がつかない試行錯誤のプロセスであり、既存事業を引っ張っていくことに長けた経営トップや幹部にはなじみがない。既存事業と違った不透明な未来の事業について、具体的なビジョンを語ることは苦手だ。

 そのようなイノベーションの素人である経営トップが指揮を執ると、イノベーション活動そのものが目的化してしまう危険がある。よくあるのが「イノベーション推進室」の設置だ。推進室の面々はシリコンバレーに駐在員を派遣し、現地の日本語を話すベンチャーキャピタリストやコンサルタントと交流し、インキュベーション施設の会員となる。だが、自社の本業を超えるほどの事業アイデアについて、真剣に検討・投資している例は意外に少ないのが実情だ。単にシリコンバレーの熱気に触れて手応えを感じ、その気になっても空回りしてしまうのだ。それは、イノベーションプロセスを設計・構築し、そこに魂を入れ、さらに事業化するための規律を課す経験も知恵もないからだ。

 企業参謀はイノベーションプロセスを立ち上げ、運営を進めるために経営トップを支えるのが仕事だ。「陰の仕掛け人」のような存在なのである。