既存の生命保険は、保険料を契約者が事前に支払い、その資金を保険会社がプールしておいて、一部を債券などで運用しながら、死亡したり病気になったりした人に対して、保険金を支払うという仕組みだ。

 この場合、保険会社には支払う保険金を可能な限り減らし、できるだけ利益を得たいという動機がともすると働きやすい。

 一方でわりかん保険の場合、支払った保険金にジャストインケースによる一定の契約管理費用を上乗せした金額を、契約者に保険料として分担してもらうかたちだ。

 ジャストインケースのもうけは、その管理費用から捻出される。そのため、保険金を支払う件数が増えるほど管理費用を徴収する機会ともうけが増えることになり、既存の生保のように「保険金の支払いを減らしたいという利益相反が、起こりにくい構造になっている」と畑社長は説明する。

 すでに、日本よりも保険の規制が緩い中国では、同種の商品が販売されており、膨大な数の契約者を獲得している。

 その代表例が、相互宝だ。アリババグループ傘下の金融会社、アント・フィナンシャルが提供しており、医療保険の加入者数は7000万人超。保険金を分担する人数がケタ違いに多いため、月2回支払う保険料が1回0.1元(約1円50銭)という破格のときもある。

 後払い方式のデメリットである保険料を事後徴収できないリスクについても、しっかりと対策を施している。

 相互宝では、アリババの電子決済サービス「アリペイ」の利用者を対象に、購買記録などから信用度を計測する芝麻信用スコアで、一定の点数以上の人のみが加入できるようになっているのだ。

 ジャストインケースは、わりかん保険においてクレジットカードの登録・決済を必須としているほか、中国での先行例に倣って、加入時に外部企業の信用情報などを一部活用できないか、検討しているという。

 既存の生保の枠組みを大きく覆す破壊力を秘めている商品として、まずは日本でどれだけの契約者を獲得することができるか。今後大きな注目を集めそうだ。 

「銀行・証券断末魔」その5
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