FRBのパウエル議長「何も言わない」術を習得したパウエルFRB議長 Photo:Reuters

――筆者のグレッグ・イップはWSJ経済担当チーフコメンテーター

***

 米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げはいつ終わるのか。18日の記者会見で質問されたジェローム・パウエル議長はこう答えた。「十分にやったとわれわれが考えたときだ」

 この返答がほうふつとさせるのは、米連邦最高裁のポッター・スチュワート元判事によるポルノ写真の定義:「見れば分かる」だ。パウエル氏の答えは任務の不確実性を表すと同時に、具体性に束縛されるのを避ける趣向になっている。

 実際、FRBの次の一手について会見の間中問い詰められながら、パウエル氏は答えにならない答えを次々と繰り出した。次の政策金利の方向性に関しFRBに「バイアス」はあるか、との質問には「われわれはフェデラルファンド(FF)金利を25ベーシスポイント(bp)引き下げるという、1つの決定を下した」と返した。

 こうした計算ずくの「はぐらかし」は、米中貿易戦争といった経済の主要リスクの先行きが見通せないことが直接的な背景となっている。だが、そこにはより大きな目的もある。FRBの意図について多くを語らずにいれば、意思疎通の齟齬(そご)を最小限に抑えつつ、景気動向や貿易戦争に変化があった場合に柔軟性を最大限に発揮することができる。