ビジネス向けチャット「Slack」の普及が急速に進んでいる。日間アクティブユーザーは1000万人を突破し、1週間に交わされるメッセージ数は10億件超。有料契約した企業数も10万社を超えた。このSlackの創業者は、写真共有サービス「Flickr」の生みの親でもあり、いずれも本業を転換して成功を収めたことで注目を集める。Slackのスチュワート・バターフィールドCEO(最高経営責任者)兼共同創業者を直撃した。(聞き手/ダイヤモンド編集部 大矢博之)
ゲームビジネスに見切りをつけ
社内コミュニケーションツールにかじを切る
――FlickrやSlackというサービスはどのようなアイデアから生まれたのでしょうか。
私が最初にインターネットに触れたのは、大学生になった1992年。ネットワークは世界中の人々をつなぐことができるという考えに魅了されました。まさに心の拡張です。それが私のキャリアになりました。
90年代後半、私はゲーム上でのソーシャルネットワークに取り組んでいました。アイデアは共通していて、コンピューターテクノロジーを使って人間の相互作用を促進するということです。ある意味で、Flickrは大規模なマルチプレーヤー写真共有サービスで、Slackはマルチプレーヤーの職場用ソフトウエアです。
ただ、このアイデアは発明というよりも、発見です。当時、約40人でゲームの開発に取り組み、相互作用の促進を目指す中で発見したのです。IRC(インターネットのチャットシステム)と呼ばれる古くからある技術に、幾つか小さな機能を追加しました。最終的に、今のSlackととてもよく似たものにたどり着きました。そして、われわれの働き方の相互作用が促進していると気付いたのです。
――Slackではなく、当時手掛けていたGlitchのゲームビジネスを続ける選択肢はなかったのですか。
(日本語で)たぶん、難しい(笑)。ゲームはあまり良いビジネスではありませんでした。情熱的なファンがいたと気付くのに時間がかかりましたし、おそらくその数も少なかった。ゲームビジネスが続けられないと思い知らされました。しかし、社内コミュニケーション用のツールは、他のチームからも使いたいと要望があり、非常に価値があると考えました。そして少し時間をかけてSlackを開発し、その事業を飛び立たせたのです。