遅れに遅れていたガラス再編を主導できた理由 Photo by Masato Kato

新型コロナウイルスの感染が拡大してもしなくても、構造改革が待ったなしの状態となっていたのがガラス業界だ。成熟している上、寡占化していて業界再編にも限界がある“超難解”な市場に、最大手のAGCはどう向き合い、これまでどんな活路を見いだそうとしてきたのか。来年、会長職に退く島村琢哉氏に、社長在任の6年間について聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 新井美江子)

5年の「空白期間」を超え
ようやく動いた業界再編

――昨年12月、業界3位のセントラル硝子と国内建築用ガラス事業を統合することで基本合意したと発表しました。新型コロナウイルスの感染が拡大してもしなくても、建築用ガラスには再編が必要だったということですか?

 実は、コロナの影響でガラスの需要がガクンと落ちたのは欧州やアジアが中心で、日本はあまり落ちていないんですよ。低い需要レベルがそのまま継続しているというか。つまり国内の建築用ガラス事業は、過去から続いている事業構造を変化させていかなければならないという根本的な課題に直面していたということです。

 先進国におけるガラスマーケットはマチュアになっていて、需要がさほど伸びなくなっている。日本も当然、例外ではありません。ガラスは(大きくて重く、輸送費がかかるため)輸出をほとんどしませんから、長期的に人口減少を免れない日本の建築用ガラスの需要は先々、細っていく。

 こういう中においては、国内の供給体制というものを再編していく必要性があるんじゃないかということが前々から言われていたんです。今に始まった話じゃなくて、過去に何回もそういう話はあった。

 経済産業省が2015年に、産業競争力強化法第50条に基づいて提言を出したくらいです。まだ体力のあるうちに、(窯でガラスを溶かして大きな板状の透明なガラスを造る)製造の上流プロセスについては生産協同組合みたいな形にして日本全体でスリム化を図る、すなわち供給能力を減らして需給バランスを取る方向に動くべきではないか、と。われわれとしてはこれを「当然の感覚だ」と受け取っていました。

――それでは、なぜ今に至るまで再編が進まなかったのでしょう。