チェンジリーダー の哲学Photo by Yoko Akiyoshi

世紀を超えて続く老舗は、変わらないから強いのではない。時々刻々と変わり続けるから、生き残っているのだ。荏原製作所は大正期から続くポンプの老舗だが、近年は半導体産業に欠かせない製造装置メーカーとして世界市場で成長している。大口顧客である半導体受託生産の世界最大手、台湾TSMC(台湾積体電路製造)とは極めて親密な間柄であり、業績面では足元の半導体好況の追い風を受けている。荏原製作所の浅見正男代表執行役社長に、創業約110年の企業の変化と進化を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部副編集長 杉本りうこ)

「超親密」な荏原だから知っている
TSMCはここまで猛烈だ

――荏原製作所は半導体製造装置サプライヤーとして、TSMCに「激愛」されていますよね。同社が毎年実施している優良サプライヤーへのアワードでは、通算10回も表彰されています。日本のサプライヤーとしては最多です。

 あのアワードは、TSMCの購買(調達)部門、R&D部門、パイロット生産部門、量産部門の4つ全てを「幸せ」にしないともらえません。値引きを頑張るといったコスト面での評価はもちろんのこと、それ以外にもTSMCにとってメリットがあるさまざまなサポートに対して評価がされます。結構厳しい評価の結果としての表彰なのです。

 ただ私は、TSMCのほうがはるかに厳しい環境で戦っていると感じています。ファウンドリー(半導体の受託製造)という領域で、パワフルなライバル企業に勝って生き残って、世界ナンバーワンであり続けることのほうがよっぽど大変です。

――それはなかなか言えない言葉では。自社の利益を考えれば、「そんなに値引きを求められたら、うちがもうかりません」などと言いたいはずです。

 そう言いたい気持ちもありますけれどね(笑)。でも、TSMCが実際にどういう企業努力をしているのかは、サプライヤーとして目の当たりにしてきました。例えば2000年代後半に、こんなことがありました。