ステーキ丼などメニューは3つのみ、「1日100食限定」で、売り切れたら店じまいする京都の「佰食屋」。売り上げをあえて減らすことで、飲食店でも残業ゼロで、従業員の給料は百貨店並みを実現します。代表の中村朱美さんは「食べることは、暮らしの根幹を担っているのに、それをつくっている人たちが満足に休めず、家族と過ごす時間も限られてしまうなんて。なんとかして、こんなよくない『当たり前』を変えたい」と考えたそうです。中村さんの著作『売上を、減らそう。 たどりついたのは業績至上主義からの解放』(ライツ社)から、慢性的な人手不足にあえぐ飲食店業界で異彩を放つ佰食屋の経営スタイルが確立するまでを追います。
100食限定という
ビジネスモデルが生み出したもの
佰食屋が、「1日100食限定」を掲げたとき、この数字にはなにも確信めいたものはなく、「なんとなくキリがいいから」と、拍子抜けするくらいの理由で決めたことでした。
けれども結果として、100食という「制約」はすべてのブレークスルーを生み出しました。それはそのまま「佰食屋」という「屋号」になり、「限定」というお客様の「来店動機」となり、「売上ファーストではなく従業員ファースト」という「経営方針」にもなり、ついには従来の業績至上主義とは「真逆の働き方」が出来上がりました。