永田町ライヴ!災害続発で公共事業問題が再燃
台風19号によってほぼ満水となった群馬県の八ッ場ダム。八ッ場ダムのような大型の公共工事は巨費と長い年月がかかり、予算は削減されてきたが、自然災害の続発を受け、公共工事を巡る流れが変わるかもしれない Photo:Natsuki Sakai/アフロ

 ヘリコプターが捉えた地面に描かれた「水 食料」の文字──。

 宮城県丸森町の山間部で孤立した住民による「SOS」の発信。東日本を襲った台風19号が残した爪痕の深さを象徴した。

 千葉県に強風による大きな被害をもたらした台風15号の襲来から約1カ月。19号は10月12日夜、伊豆半島に上陸し、関東、甲信越、そして東北地方をすっぽりと覆いながら駆け抜けた。記録的な大雨を伴い、16日午前の時点で死者75人、行方不明者は14人。しかも全容はなお見通せず、犠牲者は増える可能性がある。

「もはや過去の経験則や常識は通用しない」

 第2次安倍晋三内閣で国土交通相を務め、今の防災対策の基礎を構築した公明党の太田昭宏はこう語る。自然災害による犠牲者を少しでも減らそうと太田が2013年に導入したのが「特別警報」だ。気象庁が警告のために各都道府県単位で発表する。大雨に限らず、暴風、高潮など6種類の警報がある。「数十年に1度」という表現とともに災害が差し迫った状況にあることを伝える。19年からは5段階に分けた「警戒レベル」という新たな情報提供も始まった。

 例えば、「警戒レベル5」は「災害が既に発生しており、命を守るための最善の行動を取る」という意味が込められている。

 さらにこうした気象庁の警報の他に各市町村長が発令する「避難の呼び掛け」がある。緊急性、切迫性の違いによって「避難準備・高齢者等避難開始」「避難勧告」「避難指示」の3種類がある。

7県55河川の79カ所で堤防決壊

 しかし、こうした警報や指示などが出されても、具体的にどう対処すればいいのかはっきりしない。むしろ混乱を助長しないだろうか。全国市長会長で福島県相馬市長の立谷秀清は現行システムの運用の問題点を指摘する。

「避難指示を出すなら、どこに逃げろとか具体的な指示を与える必要がある。場合によっては自宅にいた方が安全なことがある」

 確かに今回の犠牲者の中には避難中に命を失ったと思われるケースがあった。太田も「特別警報」を導入した当時は「対象は1県か2県を想定していた」と振り返る。ところが19号に際しては1都12県に大雨特別警報が出された。テレビのニュース速報も次から次へと特別警報が出された場所を報じた。こうなると、「特別」の意味が曖昧になって危機感が薄らぐ印象は拭えない。

 今回も気象庁は19号上陸3日前の9日の段階で異例の呼び掛けを行った。

「命を守るため、早めの対策、避難を」

 しかし、近年の自然災害は年を追うごとに激甚化と広域化の傾向を強めている。注意喚起や指示だけでは防災、減災に立ち向かうことができないことが明らかになってきた。

 その一方で3・11東日本大震災以来指摘されているのが、ダム、堤防、道路など国土インフラの脆さだ。自民党幹事長の二階俊博が国土強靭化を提唱したのも3・11の震災がきっかけだ。

 今回も長野県の千曲川や、福島、宮城両県を流れる阿武隈川をはじめ、東京都と神奈川県の境を流れる多摩川など7県の55河川の79カ所で堤防が決壊した。千曲川の堤防決壊ではJR東日本の車両センターが浸水し北陸新幹線の車両10編成が水没した。かつて自民党の道路調査会長を務めた元幹事長の古賀誠は政治の怠慢を指摘する。

「国が管理する1級河川で堤防が決壊することはあってはならない。恥ずかしいことだ。政治の基本は国土と人命を守ることにある」