ディープテックで行こう!医療研究編Photo:IMAGEMORE/amanaimages

病を克服したい。健康で長生きしたい。人類にとって最も基本的な願いに、先端研究とビジネスが取り組む。特集「ディープテックで行こう!」(全14回)では、#5~7の3回にわたって「医療」分野で注目の「ディープテック」を紹介する。#7は同分野の注目3研究をお届けしよう。

「週刊ダイヤモンド」2019年10月26日号第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの

医療 注目研究1
【東京工業大学情報工学系・生命理工学系・システム制御系瀧ノ上研究室】
自律的に動く分子ロボットは夢じゃない

 生物学と情報工学、物理学との融合分野で研究を進めるのが東京工業大学の瀧ノ上正浩准教授だ。生命システムが持つ自己組織化や自律性を備えた現象を解読し、その機能と同じものを取り入れた人工の分子システムを構築することを研究テーマとしている。

 その成果の一つとして9月、細胞膜を模倣した人工細胞をDNAナノプレートで完成させたと発表した。従来の人工的な細胞を作る研究は界面活性剤や微粒子を膜に使っていたが、膜の性質を自在に変えられなかった。それが今回は、DNAを細胞膜の材料に使ったことで、DNAの塩基配列をデータ的に設計して狙い通りの機能を人工細胞にインストールできる。

 この成果は分子ロボット(図参照)にもつながる。分子ロボットは生体分子が材料で、生命体の細胞と同様に外からの情報に反応したり、自律的に判断して動いたりできるもの。分子ロボットを作る際には、左記の研究でも使われた、分子そのものの性質をプログラムするという技術が使われることになる。分子ロボットの研究は、東京大学情報理工学系研究科の萩谷昌己教授らと取り組んでいる。

分子ロボットの構造分子ロボットの構造(右)。機械の構造と対比させた 拡大画像表示