ディープテックで行こう!量子コンピューター
Photo by Yoko Akiyoshi

量子コンピューターという単語が近頃、ニュースに出現する。これがどんな機械で、産業と社会をどう変える可能性があるのか。理解している人は、きっとほとんどいない。当然である。量子コンピューターは計算機科学の先端領域で、今まさに研究中。産業界ではほとんど応用に至っていない、次世代の計算機なのだ。この最先端領域に半ば研究、半ばビジネスで挑む、飛び切り若い起業家たちがいる。楊天任氏は、量子コンピューターのアルゴリズムとアプリケーションを開発するQunaSysの創業者。山城悠氏は、東京工業大学の博士課程に籍を置きながら、量子アニーリング方式のコンピューター向けにソフトウエアを開発している。特集「ディープテックで行こう!」(全14回)の#11では、2人に量子コンピューターの基本の基を教えてもらう。

「週刊ダイヤモンド」2019年10月26日号第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの

――量子コンピューターってそもそもどういうものですか。

楊天任
「スパコンでも計算力が足りない問題がある」(楊氏) Photo by Y.A. 拡大画像表示

 今使われているコンピューターは、ビット(論理素子)が0か1のどちらかの状態で計算します。これに対し量子コンピューターの場合は、量子力学の「重ね合わせ」を利用して、量子ビットの0と1を重ねた状態で計算します。そうすると計算対象によっては、従来のコンピューターよりはるかに速く、正しい答えを得られるものがある。

――量子力学……0と1が重なる……よく分かりません。

 まあ、そうですよね。ノーベル物理学賞の受賞者(1965年)で、量子コンピューターの原案の提唱者である米国のファインマンは、「量子力学を理解できたと思ったなら、それは量子力学を理解できていない証拠だ」と言っていたくらいですから。専門外の人には正直、理解しにくい。

――それが本当に実用レベルのコンピューターになりますか。

「最適化計算で物流は大きく変わる」(山城氏) Photo by Y.A. 拡大画像表示

山城(以下、山) 確かに長い間、「理論はあるけれど、本当に作れるのか?」と懐疑的に見られてきた。でもそれが2014年に激変したんです。