ディープテックで行こう!ゲノム科学の行方
たかはし・しょうこ/1988年生まれ。京都大学農学部卒業。東京大学大学院農学生命科学研究科に在籍中に、遺伝子解析の研究を推進し、正しい活用を広めるために起業 Photo by Yoko Akiyoshi

どんな分野であれ、科学は常に進歩しているが、21世紀に入り、特に進歩の著しい分野が幾つかある。その一つが生命科学だ。特集「ディープテックで行こう!」(全14回)の#8ではこの分野の進歩を、遺伝子解析サービスのジーンクエストを創業した高橋祥子氏に聞いた。

「週刊ダイヤモンド」2019年10月26日号第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの

「ゲノム産業は絶対に伸びる」
揺るがぬ自信があった

 私は東京大学で研究職に就いていた2013年に、研究室の仲間と起業しました。当時はベンチャーといえばゲームや広告。ベンチャーキャピタルなどを回って遺伝子検査サービスの説明をしても、「ビジネスモデルが分からない」といった厳しい言葉を頂きました。でも私は、「ゲノムに関連する産業はこれから絶対に伸びる。社会に欠かせないものになる」という揺るがぬ自信がありました。生命科学を研究する人は誰でも身をもって感じていたことですが、ゲノム研究の世界は2000年以降、劇的な発展を遂げてきたからです。

 私が高校に入学したのは03年4月。その当時、校内にヒトゲノム解析計画を説明するポスターが張ってありました。人体の染色体上のほぼ全ての遺伝情報であるヒトゲノムを解析する国際プロジェクトで、1990年にスタートして03年に完了しました。ポスターを見て、「なんて壮大な計画なの」と強い衝撃を受けました。

 その後大学に入って研究の道に進むと、あのヒトゲノム解析計画のデータが研究材料として浸透していることに気付きました。生命科学の領域が発展したのは、データベースの発展と切っても切れない。ヒトゲノムはもちろん、マウスのゲノムだとかいろいろなデータベースがあって、それに基づいて急速に研究が発展してきました。こういうビッグデータは巨人の肩に乗るみたいな感覚でした。

 ちょうどこの時期はシーケンサー(DNAなどの塩基配列を解析する装置)がどんどん高度化かつ低価格化する局面でもありました。コンピューターの性能向上やインターネットの普及も目覚ましく、研究に必要なあらゆる情報が以前とは比べものにならないぐらい、アクセシブルなデータとなったのです。iPS細胞のような再生医療の発展も、生命科学のデータ化と無縁ではないと思います。