東京銀座で、90代と80代になった今でも現役で患者を診療しているふたりの医師がいる。
ひとりは、オルソクリニック名誉医院長の熊本悦明先生(90歳)。そしてもう一人は、女性成人病クリニック院長・村崎芙蓉子先生(84歳)。
奇しくも、それぞれのクリニックが同じ銀座にあり、対談が実現。今回は、ホルモンをテーマとした書籍を熊本先生が発売したこともあり、元気ホルモンであるテストステロン、そしてアンチエイジングにも効く女性ホルモンについて、忌憚なく語ってもらった。
(聞き手:石原壮一郎、撮影:宇佐見利明)
ホルモンが減ってきたら
補充をすることで元気が持続する
――前回は男性ホルモンである「テストステロン」について語っていただきました。おふたりとも、テストステロンを補充してお元気だとか
村崎 はい。私は女性ホルモン補充していたのですが、今年(2019年)に入ってテストステロン補充も始めています。そのおかげか、すこぶる調子が良くなってきました。
熊本 女性はもともと体内にあるテストステロンの量が少ないから、効き目がはっきり現われるかもしれませんね。
――初歩的な質問で恐縮ですが、女性ホルモンを補充することで、身体的にはどういう影響があるんでしょうか。
村崎 女性の閉経期前後のつらい症状は、更年期障害と言われ、女性ホルモンの急激な低下、減少によってさまざまな症状が出没します。たとえば、有名なのがほてりやのぼせなどの「ホットフラッシュ」です。ほかにも集中力の低下、頭痛、肩こり、めまい、冷え、不眠、腰痛、イライラ、うつなど、ひとそれぞれの症状が現れます。さらには、高脂血症、動脈硬化症、骨粗しょう症などにも深い関連があります。
熊本 まさに男性更年期も似たような症状です。憂うつ感や、倦怠感なども多く見られます。
村崎 これらの症状は、急激にエストロゲンが減少すると引き起こされるため、それを補充という形で補うと、それらの症状は如実に改善されます。
――そんなに変わるのですね。
村崎 はい。症状が緩和するだけで生活の質が上がります。また、エストロゲンの補充で膣の分泌益が増え、性交痛が改善されます。
実は、極度の疲労を訴える70代の女性にテストステロンの補充をしたところ、なんとなく妙な気分になって、長く別々に寝ている夫の寝室に、久しぶりにもぐりこんで行ったのですって。そうしたら、「お前、どうしたんだ。俺は疲れてるんだよ」って追い返されたそうですけど(笑)
――ええ!! それは驚きました
村崎 これって、すごくかわいらしい話で私は好きなエピソードなんですが、夫もテストステロンの補充をしていたら良かったですね。まあ、夫婦関係がとても良好だからありえる話で、今さら夫とそんなことはまっぴら、という女性も多いですからね、その辺はどうすればいいのかと(笑)
熊本 日本ではまだまだ老人の性生活に対して、当事者も含めて冷たい目を向ける人が少なくありませんが、これからは重要な問題になってくるでしょうね。
テストステロンを補充することで、性に対してアクティブになるという効果はたしかにあるようです。それはけっしていやらしいことではなく、「生き物としてのエネルギーが満ちている」ということなんですよね。