見て見ぬふりの本部
パンドラの箱は開く

 SEJの永松文彦社長は「(加盟店向けに労務の)勉強会を開いている。ロイヤルティーも引き下げた」と釈明するが、ファミリーマート、ローソンの本部を含めいずれも、「社会保険の加入義務は加盟店の責任」とのスタンスを崩していない。

 確かに、一義的に加入義務があるのは加盟店と従業員である。

 しかし、コンビニの成長期ならいざ知らず、過剰出店とさえいわれる昨今の環境下、本部があらゆる負担を加盟店に押し付ける構造が問題視されるに至った経緯は見逃せない。

 しかも、全国の加盟店の加入義務の有無を知ることができるのは、各社の本部だけだ。

 なぜなら、全ての店舗に置かれたストアコンピューターによって、全従業員の勤務状態を1秒単位で記録し、先般SEJで残業手当の不払いが問題になったように、給与計算さえ代行しているからだ。

 コンビニ加盟店以外にも未加入の中小事業者がいるとの反論もあるだろう。しかし、日本を代表する企業であるコンビニ大手の本部が事実上、加盟店の生殺与奪の権を握っていながら、違法状態を見て見ぬふりを続けることが、今後果たして許されるのか。

 一方で、もしもこれから加入義務がある全ての加盟店に保険料の支払いを求めれば、経営が立ち行かなくなる店舗が続出することになる。この問題はすでに、業界のもう一つの“パンドラの箱”と化しているのだ。これらは本来、人手不足や過剰出店による過当競争がここまで深刻化する前に解決しておくべき問題だった。しかし「社会のインフラ」などともてはやされる裏側で改革が遅れ、放置されてきたまま今に至っている。