世界的に再編が進む塗料業界で、海外展開を積極的に進め、中国を筆頭にアジアにおいてもシンガポールのウットラムグループとの提携強化を進め存在感を高めている日本ペイントホールディングス。2019年3月に同社会長に、また2020年1月には社長CEO(最高経営責任者)兼任も発表した田中正明氏に、中国市場での取り組みや今後の成長性、CSR活動の重要性などについて聞きました。(インタビュアー 松田亜有子)
中国での売上高の半分は
BtoCのDIY市場
──最初に、日本ペイントホールディングスの売上6230億円(2018年度実績。2019年度決算は2月公表)のうち4割を占める中国事業の現状についてお聞かせください。
現在、世界の塗装需要を地域別に見ると、圧倒的に多いのが中国市場です。事業別では、建築用、工業用などの需要が、全体を牽引しています。たしかに一部報道では、中国の都市化が進む一方、経済自体は減速傾向にあるという見方もありますが、中国の人口は増え続けており、塗装需要についてもまだまだ成長機会は十分にあると言えます。
そして、そうした需要に迅速に対応するため、中国事業は建築用塗料と自動車・工業用という2つのグループで、従業員数8400人以上、製造拠点は46拠点と中国全土に展開しています。さらには、1万店以上の販売店が直接の窓口となり、お客様の多様なニーズに対応できる体制を構築しています。
──中国で展開している「立邦」というブランドは、中国経済サミットで「優れたブランド賞」を3年連続で受賞されています。中国のBtoC市場は日本のそれとどのような違いがありますか。
壁紙を多用する日本では想像できないことですが、中国では住宅の室内を塗装で処理します。
たとえば、子どもが小さいうちは、パンダなどかわいらしい塗装を施し、成長するのに合わせて落ち着いた色にするなど、何度も塗り直しが発生するため、想像以上に塗装需要があるのです。そのため、中国での弊社の売上高の半分は、BtoCのDIY市場なのです。
また、もう1つの主力である自動車、工業用の塗装では、自動車、鉄道、重機、橋や建物など、幅広く使用されています。
──中国市場では、「Color, Way of Love」などのCSR活動も積極的に展開されています。その内容とは?
「Color, Way of Love」は、地方の学校を塗り替え、アートの力で教育をサポートする活動です。2009年に開始して、今年11年目を迎えるプロジェクトで、現在までに200を超える中国の市町村、342以上の学校でプロジェクトを実施してきました。
また、2016年からは世界中の有名なアーティストと一緒に壁画を描くプロジェクトを開始し、これまで91名のアーティストと80の作品を完成させてきました。さらには、アジア全域で建築を学ぶ学生向けのデザインコンペティション「ASIA YOUNG DESIGENER AWORD」を2008年から開催し、現在ではハーバード大学のアートスクールと連携しています。2018年度には15地域から8000人を超える応募があるなど、中国だけでなく、アジアの次世代を担う若者たちに成長機会を提供しています。