働く人の心身の健康に資するオフィスの在り方とは? オフィス用品・設備などを扱うイトーキの山田匡通会長に、働く人々の活動を支援する「空間」「環境」「場」づくりの“今”と、中国市場での取り組みなどについて聞きました。(インタビュアー 松田亜有子)
――イトーキは「明日の『働く』を、デザインする。」というミッションを掲げ、働く人々の活動を支援する「空間」「環境」「場」づくりに取り組んでいらっしゃいますが、世界にどのようなソリューションを発信されているのでしょうか。
イトーキが導き出した次世代の働き方戦略に「XORK Style」(ゾーク・スタイル)というものがあります。これは、企業の成長とワーカーの幸せを共存させる働き方であり、企業とワーカー、そして社会に「Happiness」をもたらすことを目指しています。
そして、その戦略を体現しているのが、2018年秋に完成した東京本社オフィス「ITOKI TOKYO XORK」(イトーキ トウキョウ ゾーク)です。本社オフィスでは生産性と創造性を飛躍的に向上させるためのさまざまなチャレンジを行なっていますので、ぜひ、一度見学していただきたいと思っています。
例えば、ABW(Activity Based Working)に基づく「10の活動」を体現した空間。ABWというのは、オランダのワークスタイルコンサルティング企業VELDHOEN + COMPANYの研究によって作られた考え方で、私たちは「高集中」「コワーク」「電話/Web会議」「二人作業」「対話」「アイデア出し」「情報整理」「知識共有」「リチャージ」「専門作業」という10の活動を行うのに適したオフィスを提案しています。
また、働く人たちの健康・快適性に焦点を当てた世界初の建物・室内環境評価システムである「WELL Building Standard」(WELL認証)のゴールドレベルを獲得するなど、働く人の心身の健康に資する取り組みをみずから実践することで、お客様にこれからの働き方を提供していきたいと思っています。
――働く人の心身の健康に重きを置いたオフィスというのは、例えばどういうものですか。
なかでも、見学された方が一様に驚かれるのは、座禅のエッセンスを取り入れた瞑想できるスペースを用意している点です。海外ではこれをマインドフルネスと呼んだりして広がりをみせており、イトーキではマインドフィットネスという言葉で表現しています。たとえば、アップル社の創業者である故スティーブ・ジョブズ氏も、来日した際には熱心に座禅を行っていたそうですが、セールスフォースCEOのマーク・ベニオフ氏も熱心にマインドフルネスに取り組んでいることで有名です。
グーグルやハーバード・ビジネス・スクールが積極的に取り入れるなど、ビジネスシーンにも広範囲に応用されていくなか、弊社でも米国のパートナーと一緒に、マインドフィットネスだけでなく、クリエイティブなコミュニティを創造するためのワークスペース「グローバルツリーハウス」を2018年に設立しました。
――オフィスに座禅のスペースがあるとは面白いですね。
この禅というのは、中国とは切っても切れない関係にあります。インドのサンスクリット語にその起源があることからわかるように、禅はインドから中国に伝わり、やがて鎌倉時代に道元禅師によって日本にもたらされたものです。無門関、碧巌録、従容録、趙州録など、現存するテキストのほとんどは中国の禅僧によって著されたものですし、そういった点からも、中国とのご縁を感じずにはいられません。