経済産業省が所管する東京中小企業投資育成において、職権乱用とも受け取れる株式の売却があったことが週刊ダイヤモンド編集部の調べでわかった。裏では特許庁長官を務めた経産省の大物OB2人が関与しているとみられる。今回使われたスキームである投資育成制度の存在意義を含め、疑惑と疑問が広がっている。
横浜の山下公園から見える大型倉庫などを保有する横浜新港倉庫。総資産は50億円ながら、純資産が21億円もあるという、典型的な老舗の倉庫会社だ。この会社の経営権をめぐり、経済産業省OB2人が暗躍した。
事が起こったのは2010年8月。横浜新港倉庫の取締役会が開催され、ある議案が上程された。内容は「東京中小企業投資育成(東京投資育成)が保有している横浜新港倉庫株100万株の売却を承認してほしい」というもの。議案は異議なく可決され、程なく株式の売却が行われた。
東京投資育成は、自治体と金融機関が株主という、公的な組織。中小企業に長期に渡って安定的な投資を行っており、横浜新港倉庫の株式は1978年に引き受けていた。
問題なのは売却相手だ。横浜新港倉庫は創業家が株式の大多数を保有するが、当時は創業者の長男の流れをくむ長男家と、次男家が対立していた。こうした複雑な状況下で、東京投資育成は100万株のうち、80万株を長男家へ、10万株を長女家の志賀学氏へ売却した(上図参照)。