2月28日に米連邦準備制度理事会(FRB)、3月2日に日本銀行と欧州中央銀行(ECB)が、新型肺炎の影響に適切に対処することを示唆する緊急声明を発表した。
株式市場は世界的に安堵を示したが、本質的にはこの先いかにウイルスの感染を鎮静させるかが重要となる。2008年の金融危機を“予言”したヌリエル・ルービニ・米ニューヨーク大学教授が英紙「フィナンシャル・タイムズ」(2月26日)に寄稿していた。「政策当局者が迅速に救済してくれるという期待は誤解である」「財政政策はゆっくりとしか動けない」「中央銀行が持つ弾丸は切れている。ECBや日銀がどれだけマイナス金利を深掘りできるというのだ? FRBの利下げ余地は1.5%しかない」「コロナウイルスの影響の大半はネガティブなサプライサイドショックであり、金融政策では対処できない」
同教授は、中央銀行などが金融緩和のシグナルを送れば市場は一時的にポジティブな反応を示すだろうが、「感染がより深刻化したり、経済への打撃がグローバルに広がったりすれば、そういった反応は消えてしまう」と指摘している。
日銀とECBがもしマイナス金利を深掘りすれば、消費者マインドはかえって悪化する恐れがある。また、両者とも大規模な資金供給は既に実施してきた。いくらか規模を広げても、市場心理に及ぼす「偽薬効果」は限られる。
相対的に最も政策発動余地があるのはFRBだ。ただし、2月28日の簡潔な声明文を読むと、あることに気が付く。その四つの文章には全て「経済」という言葉が入っているが、株式市場への配慮を示唆する言葉は避けている。1月の米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨には間接的な表現があったが、今年に入ってからの株式市場には過熱感があったとFRB幹部は見ているようだ。