
デフレ色強まる中国経済
成長率の名実逆転は9四半期連続
中国国家統計局によると、2025年4~6月期の実質GDP成長率は前年同期比5.2%(以下、断りのない限り、変化率は前年比、前年同期比)だった。1~3月期の5.4%からやや減速したが、事前の予想と比べて堅調だったといえる。
「トランプ関税2.0」の悪影響が懸念されたが、米国以外への輸出増加が米国向け輸出の急減を補って余りあったことや家電・通信機器の買い替え促進策が、一部地方の補助金の払底を招くほどの活況だったことなどが堅調の背景だ。
だが一方で、デフレ傾向が強まっていることは懸念される。4~6月期のGDPデフレーターは、▲1.3%となり、1~3月の▲0.8%からマイナス幅が拡大。23年4~6月から9四半期連続でGDPデフレーターのマイナスが続いている。
25年後半以降は、不動産市場が再び悪化していることに加え、トランプ政権による対中国上乗せ関税の発動停止の期限となる8月中旬以降の対中関税の行方が不透明であり、楽観は許されないことや、9月以降は、昨年から実施された大型家電の買い替え促進策の反動が懸念されることなどから景気は減速する見通しだ。
とりわけデフレ加速で懸念されるのは、中国のデフレ問題を象徴する、NEV(新エネルギー車)を中心とした自動車産業の「内巻(Involution)」(破滅的競争)だ。
最大手のBYDが5月に今年3度目の値下げを表明、他のメーカーが追随するなど、行き過ぎた価格競争で、各社の収益率は大きく低下している。一方的な値下げの通告など、部品メーカーやディーラーにも過度の負担を強いることになっている。
影響は、現地に進出し価格競争の消耗戦に巻き込まれている日系企業だけでなく、中国国外にも及ぶ可能性がある。