美容家電や化粧品、美容クリニック――。中国人の「美容」意識の高まりが、日本の美容市場に多大な恩恵をもたらした。中国人富裕層をターゲットに、業界の垣根を越えた戦いが繰り広げられている。ところがその盛り上がりを新型コロナウイルスが直撃。バブルから一転、サバイバルレースに突入した。特集『美容医療 美は金で買える』(全8回)の#2では、中国人富裕層をめぐる熾烈な戦いを追った。(ダイヤモンド編集部 相馬留美)
9万円の美顔器が中国人にバカ売れ
家電量販店の花形売り場に「美容家電」
家電量販店の激戦区、東京・新宿。その一等地に立つビックロ ビックカメラ新宿東口店のショーウインドーには、美顔器を着けたマネキンが並んでいる。そして、正面玄関付近に広がるのが美容家電フロアだ。
テレビにパソコン、携帯電話――。家電量販店の入り口は時代の“旬”の商品を並べてきた花形の売り場だ。その場所を美容家電が勝ち取った。美容は中国人観光客の客寄せツールとなっているのだ。
マネキンが身に着けていた美顔器のメーカーはヤーマン。美顔器のトップブランドとして海外でも認知度が高まっており、売り上げの約5割を中国人客が占める。2019年11月の「独身の日」には、中国最大のECサイト「Tmall」で、美顔器カテゴリーで唯一、1日の売り上げが1億元(約15億円)を超え、中国人の“爆買い”のターゲットになっている。
美容家電売り場で幅を利かせるのは、ヤーマンの美顔器「フォトプラス」や、美容家電大手MTGの美容ブランド「リファ」、パナソニックの「パナソニックビューティ」の製品群である。
「美容家電は買い替え需要で、従来購入していたものより高価格帯の商品を買う傾向にあります」と語るのはビックカメラ広報・IR部の高田雅人氏。
高田氏によれば、かつてのフォトプラスの売れ筋は4万円前後の商品。ところが今の一番人気は9万円台まで跳ね上がった。値段が高いほど美容効果が高いのではないかという中国人客の期待が、美容家電のインフレを引き起こしている。