中国人富裕層の美容に対する需要は、美容家電にとどまらない。化粧品でも同様だ。コーセーや花王など化粧品大手は19年、最高級ラインを軒並み強化。中国人の富裕層マーケットの取り込みに力を注ぐ。

 花王は19年12月、プレステージブランド「エスト」(海外では「センサイ」ブランド)から、スキンケアの新製品「バイオミメシス ヴェール」を発売した。機器を用いて極細の繊維を直接肌に吐出し、肌上に極薄膜を形成して湿潤環境を作る花王の技術「ファインファイバーテクノロジー」を応用した製品だ。美容家電のノウハウのあるパナソニックとタッグを組んで商品化にこぎ着けた。機器と製剤を組み合わせて使用するため、初期費用が7万円かかる。

花王のエスト「バイオミメシス ヴェール」。ディフューザー(機器)にポーションを取り付けて使用する花王のエスト「バイオミメシス ヴェール」。ディフューザー(機器)にポーションを取り付けて使用する Photo by R.S.

 花王はこの新製品を「あくまでもスキンケア商品」と強調するが、将来的には、皮膚の角質や汚れなどを除去する「ピーリング」後のケア需要も視野に入れているようだ。このピーリングのアフターケア化粧品で一山当てたのが、シーズ・ホールディングス(旧ドクターシーラボ)のオールインワンゲル「アクアコラーゲンゲル」だ。

 シーズ・ホールディングスは美容クリニック「シロノクリニック」の城野親徳会長が創業。「ドクターズコスメ」(医師が開発や監修した化粧品)の先駆けである。

 アクアコラーゲンゲルは日本では40代以上をターゲットにしてヒットしたが、中国ではピーリングなど美容医療の施術後のケアに使われ、爆発的に売れた。18年に城野氏はシーズ・ホールディングスを米ジョンソン・エンド・ジョンソンに約800億円で売却。都内のある美容クリニックの院長は、「城野さん、もう働かなくていいのにね」とその成功をうらやむ。

ブローカーの暗躍で価格が青天井に
中国人富裕層が起こした美容医療バブル

 中国人富裕層の美容需要は美容医療をものみ込んだ。“爆整形”ブームが到来したのだ。

「中国人富裕層と日本の美容クリニックの仲介をしている中国人ブローカーからの営業が1日に何人も来ていました」

 東京・代官山の美容クリニック「ドクタースパ・クリニック」の鈴木芳郎院長は、“美容医療インバウンド”の熱狂を語る。鈴木氏はフェースリフトが得意で、中国人富裕層から指名を受けることが多いという。

 中国人富裕層の美容医療インバウンドビジネスの流れはどうなっているのか。

 まず中国在住で、日本の美容クリニックで施術を受けたい富裕層が、通訳も兼ねた在日中国人ブローカーに、「〇月〇日に日本に行って、フェースリフトの施術を受けたい」と連絡する。

 するとブローカーは、指定された日程でフェイスリフトの施術ができるクリニックを探して予約する。先ほど鈴木氏が語った「ブローカーの営業」とはこのことだ。

 クリニック側は、中国人客から「どんな施術を受けたいのか」という希望や顔写真をメールで送ってもらうなどして、事前にカウンセリングを行う。施術当日は客とブローカーがクリニックを訪れ、施術を行う。

 ブローカーの収入は客からの手数料と、クリニックから受け取る施術費用の数パーセント分のリベートだ。

 なぜこれでバブルが起きたかというと、手数料と施術費用が青天井だからだ。「手術費用の価格は事前に顧客に伝えますが、富裕層にとって1万円も1000万円も同じようなもの。多くの中国人は施術の相場を知らず、何を説明しても『サービス、サービス』という漠然とした値下げ要求しか言わない(笑)」とWOM CLINIC GINZAの深堀純也統括院長は富裕層の大盤振る舞いを語る。