メリルと瞳

 前回の続きで今回が本題、日本航空の破綻と再生をめぐるゴタゴタである。日本航空が2010年に会社更生法の適用を申請すると、「日航破綻」はニュースとして繰り返し大きく報道され、注目を集めた。日本航空の経営が苦しい状況にあることは以前から周知の事実だったにしても、いざ破綻が現実になると、政治を巻き込んで、上へ下への大騒ぎになった。

 前回話したことだが、航空会社の経営破綻はしばらく前から世界各国でごく「普通のこと」になっている。しかし、日本の航空業界はまだ「倒産ズレ」していない。アメリカ航空業界が手練手管に通じたメリル・ストリープだとすると、日本はキャリアの長さこそあれ、いまだ清純派の色が強い黒木瞳といったところか。

 アメリカでもチャプター11申請がまだ「普通のこと」でなかった時代、80年代のコンチネンタルの倒産や90年代のパンナムの消滅は、比喩ではなく「死人が出る」ほどの大騒ぎであった。日本航空の破綻はそうしたインパクトをもっていたといえるだろう。

 騒動のプロセスを追ってみよう。まず2009年から数回にわたって政策投資銀行の緊急融資が行われている。その後、民主党政権による「再生タスクフォース」が設置され、翌年についに会社更生法の適用申請。その年の年末には企業再生支援機構が3500億円を出資。金融機関も5000億円以上の債権放棄を受け入れた。ポイントは会社更生法を適用したうえで公的資金を投入しているということだ。「2枚でどうだ!」(←知る人ぞ知るバンド「宮尾すすむと日本の社長」の名曲のタイトル)とばかりの極めて手厚い救済が入った。

空前の「V字回復」

 その後どうなったか。周知の通りの「V字回復」である。破綻直前の2009年には営業利益ベースで1200億円以上の赤字だったのが、翌2010年には一気に1900億円近くの黒字、その勢いで2011年には2000億円以上という最高益をたたき出している。2011年3月には東京地裁が更生手続き終了を決定。更生法の適用申請からわずか14か月というスピード再生だ。

 2000億円を超える利益といえば、営業利益率で15%を軽く超える数字である。これが何を意味しているか。驚くべきことに、ついこの前破綻したばかりの日本航空は現時点では世界の航空会社のなかでも、ぶっちぎりの「高収益企業」なのだ。

 全日空も2011年には最高益を計上しているが、利益率は7%程度。これでも世界の航空会社と比べればピカピカの数字で、シンガポール航空、ブリティッシュ・エアー、ルフトハンザなど業界を代表する企業でも利益率は2-3%にとどまっている。日本航空の「収益力」は航空業界にあっては空前の水準といってもよい。