SDGsの裏側#2Photo:AlexLMX/gettyimages, koyu/gettyimages

“環境対応”というクリーンな政策の名の下、欧州は域内の産業振興という裏ミッションを着々と進めている。日本の総合商社や電力会社は、そのしたたかな戦略に巻き込まれている。特集『SDGsの裏側』(全6回)の#2では、覇権を争う欧州のもくろみを解き明かす。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)

スイスの資源商社に翻弄された
日本の電力会社

 発電用石炭である「一般炭」を巡るスイスの資源商社グレンコアと、日本の電力業界を代表した東北電力による「チャンピオン交渉」は2018年6月、交渉が打ち切られた。同年度の長期契約で、双方が価格面で折り合えなかったのだ。

 オーストラリア産一般炭の売り手であるグレンコアと買い手の東北電力による毎年恒例のチャンピオン交渉は、国内の大手電力会社にとって一般炭を購入するための価格指標になっていた。

 チャンピオン交渉が打ち切られ、電力業界は慌てた。すると、同年7月には四国電力などが、東北電力の先を越して1トン当たり110ドルでグレンコアとの契約合意をあっさり得た。

 結局、東北電力も他社に追随する形となり、1トン当たり109ドル台後半でグレンコアと合意。契約価格は前年度に比べて16%の値上げだった。

 世界的な猛暑に加え、中国やインドの需要が拡大し、スポット価格も上昇したというのが、価格高騰の表向きの理由だ。

 しかし、総合商社のある幹部は「日本のエネルギー業界の足元を見たグレンコアの巧みな交渉術。見事に高値でつかませた」と分析する。