気候変動に対処するために「脱炭素社会」を目指す風潮の中でやり玉に挙げられるのが、化石燃料を扱う石油化学や電力業界だ。特集『SDGsの裏側』(全6回)の#4では、三菱ケミカルホールディングスの小林喜光会長とジェラの小野田聡社長が、「化石燃料組」の生き残り術を明かす。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)
(ダイヤモンド編集部注:小林・小野田両氏には、書面を通じてインタビューを実施し、編集部で再編集した。)
三菱ケミカルホールディングス
【小林喜光会長インタビュー】
化学産業は「錬炭素術師」と語る業界重鎮
――「SDGs(持続可能な開発目標)」のバッジを誇らしげに着けているビジネスパーソンは半ば思考停止状態であると発言しています(詳しくは『SDGs、社章バッジ全員着用に感じる“怖さ”、自分の頭で考え、行動しろ』の記事を参照)。
三菱ケミカルホールディングス・小林喜光会長(以下、小林) 国連サミットがSDGsを採択したのが2015年、以降日本企業でもSDGsへの貢献をうたうところが増えてきましたが、具体的目標を設定し、経営戦略に組み込んで、中長期的な企業価値の向上につなげている企業がどれだけあるでしょうか。
重要なのは、SDGsの本質を捉えて、何が必要か自分の頭で考えて経営に取り入れること。横並びでSDGsのバッジを着けて何かを示したつもりになって、そのうち着けること自体が目的化してしまうことを危惧します。
当社は「人、社会、そして地球の心地よさがずっと続いていくこと」を表す「KAITEKI」 というコンセプトを掲げ、この実現を目指して、11年より、従来の財務指標を用いた「資本の効率化を重視する経営」と「イノベーション創出を追求する経営」に加え、「サステナビリティの向上をめざす経営」の三つから生じる価値を高める経営手法を「KAITEKI経営」と名付けて実践してきました。
スタートした頃はSDGs概念が日本ではまだ浸透していなくて、 KAITEKIの概念を社員に理解してもらうのに苦労しました。中には「社長は何を寝ぼけたことを言っているのか」と言う人もいた。私自身もメディアを通じて積極的に発信するなどして、だんだん受け止めてくれるようになってきましたが、まだまだ十分に浸透しているとは言い難い。道半ばです。