商社におけるアパレルといえば、かつてはライセンスや商標によるブランド展開が主だった。それが今や大手アパレルのサプライチェーンの裏方を担う重要な黒子になっている。特集『最後の旧来型エリート 商社』(全13回)の#11では、三井物産出身であるワークマン・土屋哲雄専務取締役に、商社との付き合い方の極意を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 相馬留美)
ワークマン の1900円人気パンツは
伊藤忠と三菱商事が企画した
――ワークマンのヒット商品に、総合商社が関わったものがあるそうですね。
当社のパンツが人気商品となるきっかけをつくった1900円(税込み、以下同)のエアロストレッチパンツは、伊藤忠商事の企画です。同じく1900円のクライミングパンツを企画したのは、三菱商事。三菱の商品では、膝下が分離可能な耐久撥水クライミングパンツ(2900円)もヒットし、この2商品合計で年100万本のミリオンセラーになっています。
――伊藤忠や三菱商事にはファッションブランドのイメージがあります。低価格帯の商品も手掛けるのですね。
大量生産してこの価格を実現できるのは総合商社だけです。両社のパンツは好評で、最近の売り上げベスト10に何点も入っています。パンツが売れると、お客さまはアウターを一緒に買ってくれるのでとてもありがたい。
――こんなに安い値段で利益が取れるのでしょうか。
うちの商品は企画段階で980円、1900円、2900円と値段が決まっています。その代わり、何十万着も作るので利益は出ます。ただ、パンツ100万本分の資材の確保は、伊藤忠レベルでないとできません。三菱や伊藤忠は、どんな部材を使うのかというところから企画を持ってきてくれます。
――2018年に始めたカジュアルウエアの新業態「ワークマンプラス」がブレークしました。そのヒットの背景には総合商社の存在があるそうですね。