総合商社の最大の強みは、世界中に張り巡らせた情報網だ。日本製品を各国で売りまくり、あるいは最果ての地に資源を探し求め、そして時に国内外のビジネスをつなぐオーガナイザー役として商社が存在感を発揮できたのは、情報という武器を持ち得たからだ。だが、その諜報力に陰りが見え始めている。特集『最後の旧来型エリート 商社』(全13回)の最終回では、諜報力劣化の背景を探った。(ダイヤモンド編集部 重石岳史)
インドネシアで孫正義氏が存在感
長くビジネスを続ける商社は…
2月末、インドネシアの首都ジャカルタに日本から訪れた、ある大物経営者の姿があった。ソフトバンクグループ(SBG)の孫正義会長兼社長。訪イの目的は、同国のジョコ大統領との会談だ。
インドネシア政府は昨年、首都をジャワ島のジャカルタから、カリマンタン島に移転させる計画を発表。移転費用は少なくとも3兆円超に上るとされ、インドネシアの国家予算だけでは到底賄えない。
そこで孫氏だけなく、アラブ首長国連邦(UAE)アブダビ首長国のムハンマド皇太子や英国のブレア元首相ら、世界的“セレブ”を移転計画審議会のメンバーとして招き、民間投資を大々的に呼び込もうという狙いだ。