部屋という部屋に、ごみが詰まった大量の袋や、脱ぎ捨てられた衣服、新聞や雑誌、食品の容器などが散乱している。これを整理するのかと思うと気が遠くなった。

 さらに困ったのは「父がどのような生活をしており、資産や負債がどの程度あるのか」がこの状態の部屋からは全く分からず、相続放棄をするか否かの判断すらつけられないことだった。かつて国内外の複数の不動産に投資をしていたことは記憶に残っていたが、実際の資産の有無は不明だった。

 遺品整理業者などの見積もりも取ったが、全ての会社から100万円以上の料金を請求された。遺品の「仕分け」を必要とする場合、業者に依頼すると費用はかなり高額になってしまうのだ。

 会社を2週間も休み、ごみの中から財産状況の手掛かりを発掘し続けた佐藤さん。結果として資産よりも負債が上回りそうだとの判断となり、相続放棄の手続きを選ぶことにしたのだった――。

 親が亡くなり不要となった家の処理や、荒廃した親の家の片づけは、子供世代にとって切実な悩みだろう。親と疎遠であったり、普段のコミュニケーションが不足していたりすれば、こうした問題に直面しやすい。さらに持ち家や分譲マンションであれば、相続放棄によって捨て置かれた実家が、近所の住民に大きな迷惑をもたらすこともある。

空き家の増加が問題
郊外だけではなく都心にも危険地帯が

 実家の片づけと空き家化――。少子高齢化や核家族化が進む中で、問題は深刻化している。

 実際、空き家は右肩上がりに増えている(図参照)。

 2018年の全国の空き家は約850万戸に上り、空き家率は13.6%と過去最高。それだけではない。野村総合研究所の19年の試算によると、33年には空き家率は最大で25.2%にもなるといい、4戸に1戸が空き家という悲惨な事態が待ち受けているのだ。

 図の「空き家」の中には、賃貸用や売却する予定の住宅のほか、いわゆる別荘などが含まれるが、問題になるのが、そのいずれにも当てはまらない「その他の住宅」。空き家全体の4割を超えているが、その多くが築古であり、破損や腐朽が見られるのだ。