半導体の地政学#4Photo:Barcroft Media/gettyimages

米国による制裁措置に苦しむファーウェイ。2020年には経営危機が一気に表面化するという。その余波を受ける日本企業とは?特集『半導体の地政学』(全8回)の#4では、ファーウェイの危機と巻き込まれる日本企業を展望する。(ダイヤモンド編集部 高口康太、杉本りうこ)

制裁下でも業績好調
その陰で迫る危機

 激化する米中対立、その焦点にあるのが半導体であり、最前線に立つのが中国通信機器・端末大手のファーウェイだ。日本でも報じられている通り、昨年5月に米国政府はファーウェイをエンティティリストに掲載し、米国企業との取引および米国の技術が一定以上含まれた製品の輸出を禁止するという厳しい制裁を行った。

 直近の業績を見ると、米国の制裁は大きな影響を与えていないかに思える。2019年度の売上高は前年度比19.1%増の8588億元(約12兆9000億円)、営業利益は同5.7%増の627億元(約9400億円)といずれも過去最高を記録している。

 稼ぎ頭のスマートフォンの出荷台数は前年比17%増の2億4060万台に達し、米アップルを抜く世界2位の座に就いた。首位の韓国サムスン電子は2億9570万台と約5000万台も上回っているものの、伸び率は1.2%にとどまる。このままいけば、数年以内にファーウェイがスマホ世界首位になる勢い。米国の制裁もどこ吹く風、19年も着実な成長が続いたように見える。

 ところが今年1月、広東省深センのファーウェイ本社を訪問し、ファーウェイのある経営幹部にそう伝えたところ、厳しい顔で返された。「いいえ、環境は確実に厳しさを増しています。20年は数字面にも明確に厳しさが表れるでしょう」。