半導体の地政学#8Photo:Tomohiro Ohsumi/gettyimages

ビジネスを国益や安全保障の道具とすることを、エコノミック・ステイトクラフトという。新・半導体戦争はまさしくその典型。この戦局を、日本企業はどう読み解けばいいのか? 特集『半導体の地政学』(全8回)の最終回では、5月に『エコノミック・ステイトクラフト 経済安全保障の戦い』(日本経済新聞出版刊)を刊行した多摩大学ルール形成戦略研究所の國分俊史所長に、経済と安全保障がクロスする時代にビジネスリーダーが考えるべきことを聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部副編集長 杉本りうこ)

米シンクタンクが言及する
「半導体と日蘭関係」

國分俊史多摩大学ルール形成戦略研究所所長國分氏は外資系戦略コンサルティングファームでの経験が長い。その経験を生かし、流動的な国際情勢とビジネスの交差する領域で積極的に提言している Photo by Yoko Akiyoshi

──米中対立の中で、半導体産業が重要な論点になっています。

 米国のシンクタンクのレポートにこのところ、日本とオランダの連携に言及したものが増えています。背景には、オランダに半導体製造装置の世界的に重要な企業、ASMLがあるという事実が存在しています。この企業があることを前提に、米国のシンクタンクは米国とオランダ、日本の間での連携の枠組みを提言しているのです。

 日本とオランダの関係は今までのところどうだったかというと、歴史的な経緯があり、互いにそれほど親近感がなかったというのが現実です。この中で、新たな日蘭関係をつくっていくとなれば、10年がかりでしょう。

 そもそも、現在の国際情勢の難しさの根底には技術革新の加速があり、そこに半導体も関わっています。米中対立でも、新しい技術が登場すると議論の前提条件が変わりかねません。この「技術が国家安全保障の環境を変え続けている」という感覚は、日本企業にはまだまだ理解されていません。