「プロジェクトX」さながらのノンフィクション小説のような開発秘話、ぜひご堪能いただきたい。(石田 翼)

本書の要点

(1)QRコードは、トヨタの発注先であるデンソーが開発した。トヨタの生産方式である「かんばん」を電子化しようとしたことが、そのはじまりであった。
(2)より大容量の情報を短時間で簡単に、ミスなく処理できるものとして、当時アメリカで開発が進んでいた二次元シンボルを独自アレンジして生まれた。
(3)パブリックドメイン化し、入念な準備によって国内外で規格が標準化されたことで、一般生活でも広く利用されるものとなった。

要約本文

◆QRコードの発端
◇すべては「かんばん」から始まった

 すべての始まりは、デンソーがトヨタに部品を納入していた関係で、トヨタの生産方式である「かんばん」を導入したことにある。「かんばん」とは、何をどこから仕入れ、どこに置いておくかをわかるようにした標識のようなもので、「必要な時に必要なものを必要な量だけ」生産することを目的としている。

 だがデンソーでは、多頻度納品による検品や伝票の起票作業などで、時間と人手がかかってしまうという課題が生じていた。そこで「かんばん」をコンピュータで読めるようにすれば、製品のチェックと伝票の自動作成を行えるようになると考えたのだ。

◇独自のコードとリーダーの開発

 しかし、ことはそう単純にはいかなかった。自動車部品工場の現場は油汚れが多く、ひどい状態の「かんばん」でも読み取れるようにしなくてはならなかったからだ。しかも「かんばん」に含まれる製品の情報を収納するために、少なくとも60桁以上のデータを格納できる必要があった。それを満たす既製品のバーコードとそのリーダーは、まだ市場になかった。

 そこでデンソーは取引のあった神崎製紙の自動写植機をもとに、印刷にも強い「NDコード」を開発するとともに、当時普及していたものより読み取り性能が高く、安価なバーコードリーダーを発明した。