前回は、駐日ミャンマー連邦共和国大使キン・マウン・ティン氏による、日本企業に対するミャンマー投資への高い期待と、彼が期待する日本からの投資対象業種についてご紹介した。

 一方で、日本企業はその熱い思いにどのように応えようとしているのだろうか。日本企業側から見て、投資対象として魅力に思う業界はどこなのだろうか。この2点の疑問に答えるために、数多ある日本企業の中でも、商社のミャンマー事業戦略を見ていきたい。

 なぜなら商社は資源開発やインフラ整備、食料、小売りに至るまで幅広い取扱い業種を抱えているなかで、彼らがどの業種に注力しているかを見ることで、その投資対象業種の魅力の濃淡が見えてくるからだ。また、彼らから見てのミャンマー進出におけるハードルについても聞いてみたい点だ。

 今回は商社の中でも、民政移行に向けて比較的早い段階からミャンマーに対して積極的にアプローチを開始した丸紅の、市場業務部部長代理兼アジア太平洋チーム長の森本康宏氏に、彼らのミャンマー戦略について話を伺った。森本氏は、丸紅におけるミャンマーを含むアジア地域の市場調査を統括されており、ミャンマーにおいても昨年から数度にわたって現地を視察し、現在の政治経済面の変化の流れを追っている。

 インタビューの内容に入る前に、丸紅のミャンマーにおける今までの立ち位置を振り返っておこう。

 丸紅は1942年にミャンマーに駐在員事務所を開設し、同国における貿易や投資へ積極的に関与してきた。同国の水力発電所の建設に幅広く関わった実績を有し、1960年には日立製作所と組んで同国最大の「バルーチャン水力発電所」を建設。これは日本の戦後賠償の第1号で、日本とミャンマーの緊密な関係を象徴する案件だ。

 2003年に米国が経済制裁を発動してから新規ビジネスを中断していたが、10年度から社内の東南アジア諸国連合(ASEAN)戦略委員会のなかでミャンマーを注力国として事業化の可能性を探ってきた。昨年11月には、勝俣宣夫会長がミャンマーを訪問しテイン・セイン大統領と会談を行っている。また今年の3月にはネピドー事務所を開設し、外資初となる首都での常駐拠点を設置した。

民主化が成功するか誰もわからない
政権の安定がビジネス継続の条件だ

 ミャンマー投資は熱を帯び、「バブル状態」と表現する者もいる中、すでに70年以上前からミャンマーでビジネスを手がける丸紅は、いたって冷静だ。

――丸紅として現在のミャンマーの変化についてどう見ているのか。