不妊治療の光と闇#1Photo by Seiko Nomura

不妊治療の現場で行われている治療や検査には、実はエビデンス(科学的根拠)に乏しいものが少なくない。無駄なオプション漬けで雪だるま式に価格をつり上げ、患者から金を巻き上げているところもある。特集『不妊治療の光と闇』(全8回)の#1では、夫婦の未来を託す、不妊治療施設選びのポイントを解説する。(ダイヤモンド編集部 野村聖子)

肝心の治療成績「妊娠率」の定義もバラバラ
全てが悪徳業者に見えてくる

「何が書いてあるのか、さっぱり分からなかった」

 東京都内に住むNさん(40代女性)は、通院を検討した不妊治療クリニックのホームページを初めて見たときのことをこう振り返る。

 不妊治療は、その多くが公的保険適用外の自由診療。一口に不妊治療と言っても、その値段や治療内容は施設によってバラバラであり、肝心の治療実績を一覧で比較するような情報もない。

「妊娠率」という数字を実績として公表している施設も多いが、以前ダイヤモンド編集部が136の不妊治療施設から回答を得たアンケート調査(「週刊ダイヤモンド」2018年7月21日号第2特集「不妊治療最前線」)では、何をもって妊娠と定義するか、その解釈は施設間で全く統一されていないことが明らかとなった。

 不妊治療を専門とする八重洲中央クリニック院長の田口敦医師によれば「通常、妊娠6週前後に超音波検査で『胎のう』という袋が子宮内に見えれば『妊娠』とするのが一般的」。その週数まで至れば流産率が低下し、出産まで妊娠を継続できる可能性が高まるからだ。

 しかし、中には市販の妊娠検査薬にも反応しないような早期(妊娠3~4週ごろ)の血液検査でしか検出されない、ごく微量のホルモン値で「妊娠」と判定し、それを実績としているクリニックもあった。

 言わずもがな、不妊治療のゴールは「妊娠」だ。その妊娠率の定義が統一されていないのだから、正直比較のしようがない。

「全てが悪徳業者に見えてくる」とNさんは憤るが、それが自由診療の世界。

 だからこそ、良い施設を選ぶには、患者側が知識を身に付け、賢くなるしかない。

 不妊治療のエキスパートたちへの取材を基に、良い施設と悪い施設を見抜くためのポイントを伝授する。