不妊治療の光と闇#4Photo:PIXTA

かさむ費用に、先の見えない治療。平静を保てと言われる方が難しい状況だが、一歩間違えれば金も伴侶も失ってしまう。特集『不妊治療の光と闇』(全8回)の#4では、経験者たちが語る、“妊活”クライシスに陥らないためのマネー管理と、パートナーとの適切なコミュニケーションについての金言をお届けする。(ダイヤモンド編集部 野村聖子)

体外受精19回で総額600万円
治療の最後は発狂寸前に

「外車1台は買える金額です」

不妊治療の経験者たちは、これまで費やした治療費についてこのように例えることが少なくない。

2年間で19回もの顕微授精にトライしたという、Tさん(40代女性)もその1人。Tさんは、40歳未満で卵巣機能が急速に低下し、月経が来なくなる「早発閉経」(早発卵巣不全)と診断された。

 早発閉経は、不妊の原因となる疾患の中でも最も重いものの一つで、Tさんの治療も困難を極めた。そのため、Tさんは不妊治療以外にも、サプリメントや漢方、鍼灸などあらゆる代替療法を試したばかりか、“妊娠しやすくなる”という温泉にまで足を運んだ。

 そんな医療機関の治療費以外の費用も合わせた総額、つまり“妊活代”は、実に600万円超。まさに外車1台分である。

 幸いTさんは治療の末、男の子を授かった。しかし「不妊治療の終盤には、『小さな男の子が私の後を付いてくる』と毎日言い出すようになった。もちろん僕には見えていませんでしたよ……」(Tさんの夫)。終わりの見えない治療生活で、相当精神的に追い詰められていたということだろう。

 それでも「できれば2人目も欲しい」というTさんに「あのつらくて高額な治療をもう一度やろうと思うか」と問うと「お金じゃないんです」という言葉が返ってきた。

 確かに子宝を金に換算することはできない。しかし、気の済むまで治療費をつぎ込んだ先に待っているのは家計破綻だ。

 それだけではない。不妊治療を巡って夫婦仲に亀裂が入るケースも決して少なくないのである。

“妊活クライシス”で、家計も夫婦仲も炎上させないためには、不妊治療にまつわるマネーの知識とコミュニケーション術を身に付けておくのが大切だ。