11月7日、待ちに待った当選確実の報を受けて、民主党のバイデン氏が大統領選挙の勝利演説を行った。投票日の11月3日から4日が経過し、決着までに時間がかかるとの見方がくすぶる中での急展開は、バイデン氏による劇的な勝利を印象づけた。その一方で、大統領・議会選挙双方での圧勝が予測されていた下馬評と比べれば、民主党が期待外れだったのも間違いない。果たしてバイデン氏は、どのような勝利を収めたのか。その成果と限界を、冷静に見極める必要がある。(みずほ総合研究所欧米調査部長 安井明彦)
当選確実を決めたバイデン氏
穏当な構図で勝利を手に
2020年の大統領選挙は、総括が難しい。バイデン氏の勝利をどう感じるかは、何を基準にするかに左右されそうだ。
11月3日の投票が締め切られた直後の情勢と比べると、バイデン氏の勝利は劇的だ。初期の開票では、トランプ氏の得票が事前の予想を上回った。大票田のフロリダ、オハイオ、テキサスでバイデン氏が敗北すると、にわかにトランプ氏再選の可能性が現実味を帯びた。そこからの「逆転」となれば、支持者が盛り上がるのは当然だ。
一方で、選挙前の下馬評と比べれば、バイデン氏の勝利は期待外れに見える。大票田を取り返しての圧勝は夢と消え、当選を決めるまでには日にちがかかった。何より、大統領選挙と同日に投開票が行われた議会選挙では、大幅な議席増を期待されていた民主党が伸び悩んでいる。
多数党奪回を目指した上院では、決着こそ来年1月5日にジョージア州で行われる決選投票に持ち越されたものの、そこで民主党が勝っても、過半数ギリギリの50議席にしか届かない。余裕の戦いのはずだった下院では、逆に民主党が議席を減らす勢いだ。
冷静に考えれば、バイデン氏は考え得るもっとも穏当な構図で勝利を手に入れた。バイデン氏は、民主党が2016年の大統領選挙で失った州を、勝利に必要な最低限の水準で取り戻した。とはいえ、バイデン氏が2012年に民主党のオバマ氏が集めた支持を取り戻せたわけではなく、特に中西部での党勢回復は道半ばである。