日本銀行が追加金融緩和に踏み切った。ヨーロッパ中央銀行(ECB)、アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)に続く緩和措置である。資産買入基金の総額を10兆円増やして80兆円とし、買入終了期間(2013年6月末)を13年12月末まで半年延長する。10兆円増額の内訳は、長期国債と短期国債が5兆円ずつだ。追加緩和は、今年4月以来5カ月ぶりのことだ。35兆円で始まった「資産買入基金」は、80兆円まで拡大したことになる。

為替レートは
教科書と逆に動いた

 日銀が緩和措置をとったのは、ECBとFRBの緩和措置によって、円高になる懸念があったからだ。

 日銀が何もしなければ、批判が強まるのは目に見えている。したがって、為替市場介入などの直接的手段が発動される前に、日銀が予防的に動いたのであろう。今回の決定は、購入限度を引き上げるというだけで、実際の購入額を直ちに増加させるものではない。日銀が消極的なのは、「少なくともポーズを見せなければならない」という判断に基づくものだろう。

 ところで、為替レートの実際の推移は、図表1に示すとおりとなった。

 まず、9月13日にFRBがQE3を決定したが、これによって円高になるのではなく、逆に円安になった(東京市場の終値は、13日の1ドル=77.48円から14日の78.39円へ。さらに、18日には78.8円へ)。

 9月19日に日銀追加緩和が発表された後は、一時は79.22円まで円安になった。しかし、終値では、78.38円だった。そして20日には78.02円まで円高になった。

「金融緩和は資金流出をもたらすので、自国通貨を減価させる」というのが、教科書的なメカニズムだ。今回は、どちらのケースにおいても、教科書にあるのとは逆の結果になった。

 この説明として、「日銀の追加額は限定的だから」ということが言われる。あるいは、決定後数日間では本当の効果が現われず、もう少し様子を見る必要があるとも言われる。いまのところ、この問題についてはっきりしたことは言えない。