これからの就労移行支援所に望まれることは何か
ジョブコーチを企業に「訪問」させることも多い就労移行支援事業者の存在*3 は、昨今の障がい者雇用のカギになっている。NPO・社会福祉法人・民間企業などによる就労移行支援は今後どうあるべきか。
*3 障がい者雇用のいま(1) 数字を伸ばす「就労移行支援」とは何か?
清澤 「障がい者を就職させればいい」という考えだけの就労支援者も中にはいます。コロナによって、企業側が障がい者の雇用管理方法などを変えていかなければいけない現在(いま)、支援機関側も変わっていく必要があるでしょう。たとえば、就労移行支援所では、就労のための基礎訓練のみならず、専門分野(専門的な仕事の知識やスキル)を教えていくといったふうに、障がいのある方の能力を特化していく必要もあると思います。
支援機関が変わらなければ、障がい者自身の就労意識も変わりません。ジョブコーチをはじめ、まずは就労支援者が、雇用者となる「企業を深く知ること」が大切です。企業の論理や風土をよく知り、法定雇用率を達成できていない会社の「雇用したいけど、うまくいかない」という状況を第三者の視点から理解していくことです。それぞれの会社の事情を知らずに、支援機関側が「雇用率を達成していないので雇いましょう!」と強く申し出たところで、企業はなかなか変わりません。経営者や担当者の本音は「どうしたらいいのか分からない」であり、「雇えない理由を一緒に考えましょう」という支援機関の姿勢を望んでいるのです。
コロナ禍で法定雇用率が上がっていく今後、企業のニーズに確実に応えながら障がい者の職場定着率を上げていくこと、企業側の障がい者雇用のノウハウ構築の支援を行うこと、そして、企業側の不安をキャッチし、的確に応えていくことが、就労支援機関やジョブコーチの役割であることは間違いありません。
※本稿は、現在発売中のインクルージョン&ダイバーシティマガジン「オリイジン2020」からの転載記事「ダイバーシティが導く、誰もが働きやすく、誰もが活躍できる社会」に連動する、「オリイジン」オリジナル記事です。