有名大学卒が新卒入社する
ベンチャー企業が投資対象として狙い目
――分散投資というのは、大きな金額にならなければ、意味がないということですか?
私はそう思っています。
学術的には、一応「意味がある」ということになっていますが、実際に経験してみて、分散投資を必要としている一番の理由は、何百億円、何千億円を運用している機関投資家が、説明責任を果たすためではないでしょうか。
機関投資家というのは、銀行・保険会社・年金基金・農協・政府系金融機関など、さまざまな人から集めた巨額のお金を株式や債券で運用する大口投資家です。
そうした機関投資家が1社にすべてを注ぎ込んで、大金を溶かしてしまったら、それこそ責任問題になります。出資者からは、相当怒られるでしょうね。
だからこそ、その言い訳として分散投資は必要なんです。
でも、くり返しになりますが、私が考える投資とは、自分が「ここだ!」と思えるところに決めて、そこに投資をする。「これは成長するに違いない」「本当に応援したい」と思える企業を真剣に選ぶことこそ、大事だと思っています。
私は「卵は一つのカゴに盛るな」のアンチテーゼの意味を込めて、「卵は一つつのカゴに盛れ、ただし、どのカゴに盛るかを死ぬ気で選べ!」と言っています。
――「では、どうやって、たった一つの会社を選ぶのか」というところが気になってくるのですが、そのあたりのポイントはあるのでしょうか?
たしかに、そこは気になりますよね。『10万円から始める! 小型株集中投資で1億円【実践バイブル】』でもポイントを紹介しているのですが、たとえば、「優秀な学生が新卒で入っているベンチャー」というのは一つの目安になります。
シンプルに言ってしまえば、高学歴で、コミュニケーション力もあって、実際には大手企業や外資系のコンサルティングファームなど、どこからでも内定をもらえそうな学生が、あえて就職先に選んでいるベンチャー企業。そういうところは、狙い目の一つです。
それも1人だけでなく、何人か入っているとしたら、そのベンチャー企業には何らかの成長の源泉があります。
投資先は未上場(未公開)企業ではなく上場企業ですから、ベンチャー企業といってもある程度の規模はあります。
私は投資するときは「株価」ではなく「時価総額」に着目していますが、その視点から言うと「時価総額300億円以下」の優秀な新卒が複数入社している企業というのが、数ある中の一つのポイントになるということです。
――「投資は就職と同じ」という視点に立つと、優秀な学生が必死で吟味して「就職する価値がある」と判断した会社には、「投資する価値もある」ということですね。
本当にそうだと思います。そもそも、まだ規模の小さなベンチャー企業は、給料などの諸条件が、外資系コンサルなどに比べたらよくないケースがほとんどです。
外資系コンサルなら新卒でも年収1000万円を超えるところがありますが、それを蹴って、わざわざ年収400万円の会社に入るんです。彼ら・彼女らにとって、それだけ魅力的な会社なんですよ。
これまで私が見てきた経験でも、優秀な人たちが集まるベンチャー企業は、ほぼ例外なく伸びていきます。
私自身の実体験でも、同じことが言えます。私は東京理科大学を卒業後、同窓生の多くが大企業を就職先に選ぶ中、「オープンドア」というベンチャー企業に入社しました。
就職活動中、大企業の人事担当者の話を聞いても、まったく魅力を感じなかったんです。ベンチャー企業に狙いを定めて最終的に決めたのが、「オープンドア」でした。最近は、旅行比較サイト『トラベルコ』のテレビCMで知る人も多いと思います。
オープンドアでは、新卒時から責任ある仕事を任せてもらい、働きがいがありました。プライベートで続けていた小型株集中投資で得た大きな資金をベースに、私は独立・起業しましたが、就職時には未上場だったオープンドアは、その後2015年に東証マザーズ上場、今では東証一部上場企業になっています。
就職先も、私の目の付けどころは、間違っていなかったということですね。