「時価総額」に着目すれば
投資のポイントが見えてくる

――「優秀な新卒が入社するベンチャー企業」という点のほかに、「会社を選ぶ」ポイントはありますか?

 今、まさに「会社を選ぶ」という表現をされましたが、「株の銘柄を選ぶ」ではなく「会社を選ぶ」というところが非常に大切だと思っています。

 そのためにも、私は「株価」ではなく「時価総額」に着目することをおすすめしているのです。

 株価は見るけど、時価総額は気にしてない。そういう人は多いですが、それはちょっと違うかなと思っています。

 たとえるなら、お寿司屋さんで「マグロ一貫」の値段はすごく気にしているけど、「マグロ一匹」の値段はまったく気にしていないのと同じなんです。マグロ一貫の値段を「高い、安い」とか、「割高だ、割安だ」と言っているのは、ただ株価の変動に一喜一憂していることになりますよね。

 私が考えているのは「成長すると思える会社」「本当に応援したい会社」に、少し長い目で投資をするということなので、会社全体がどういう大きさで、どのくらい成長しているのかということに、当然着目します。

 マグロ一貫の値段よりも、マグロ一匹がどんな大きさで、いくらなのか。こちらのほうが重要ですよね。

資産1億円までなら投資先は2~3銘柄でいい

――それは、どういうことなんでしょうか?

 結局、株価が上がるためには、時価総額が上がらなければダメなんです。

「発行済株式総数」が同じならば、株価が2倍になるということは、時価総額も同じく2倍になるということ。

 株価が10倍になるためには、やはり時価総額も10倍になる必要があるんです。

 日本の株式市場で時価総額トップは、トヨタ自動車の約24兆円(2020年11月26日時点)です。すでに大きく成長したトヨタ自動車が、ここから時価総額が2倍、3倍、10倍へと成長することは、考えにくい。

 しかし、時価総額100億~300億円程度のベンチャー企業なら、10倍に跳ね上がることは珍しくありません。

 コロナ禍で大手電機メーカーのシャープがマスクを作って話題となりましたが、株価・時価総額に与えたインパクトはとても小さなものでした。

 シャープの2020年3月期連結売上高は2兆2712億円でしたが、マスクが話題となり、仮に年間100億円を売り上げたとしても、売上高全体に対するインパクトはごく僅かなので、時価総額が跳ね上がることはありません。

 当然、株価も跳ね上がったりしません。

 でも、仮に売上高50億円規模の会社が同じことをやったら、売上高が一気に4倍になり、時価総額が跳ね上がりますよね。

 これはわかりやすいたとえですが、いずれにしても株価だけでなく、会社全体の時価総額に着目することが大事なんです。

 株式投資の第一の着目点は「時価総額」。意外に見落とされがちな、この視点を、ぜひ忘れないようにしてください。

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