この1年近くの間、多くの人たちは、旅行に行くことも、スポーツを観戦することも、コンサートを見に行くこともできず、ちょっとした家族のイベントすらも断念しなければなりませんでした。そしてこの状況はまだしばらく続くでしょう。もし、無料で楽しめるスポーツイベントが移動を伴わない地元で開催されれば、お金をかけずに家族の思い出をつくることができるでしょう。ささやかながら、そんな機会を提供したい。そう私は考えていました。

 無料がダメなら有料に戻せばいいじゃないか、有料にしてその分、会場で使えるクーポン券をつければいいじゃないか、そういう声もあります。しかし、私が構想していた無料で開催するゲームとチケット代をもらって開催するゲームは、つくり方がまったく異なります。無料のゲームでは、派手なチアダンスを見せたり、生バンドの演奏を聴かせたり、タレントを呼んだりすることはしません。その分、純粋にバスケットボールのゲームを楽しんでもらうことができるし、新生ブロンコスがどんなチームなのかをストレートに伝えることができます。

 ブロンコスの歩みと新生ブロンコスの現在の姿をMCがしっかりと伝え、後はバスケを見てもらい、選手たちを見てもらう。自分の子どもやその友達のゲームを家族みんなで見に行くような感覚で、会場に足を運んでもらい、純粋にバスケをつまみに家族との時間を楽しんでもらう。そこにプロならではの「音楽」の演出で、ちょっとだけプロならではの興行の香りを漂わせる。それが興行のプロの世界ならではの、コロナ禍における無料のゲームの在り方だと私は考えていました。

無料だからこそ「原点」を見せられる

 ブロンコスはB1所属チームのようにお金のあるクラブではありません。生まれ変わって歩きだしたばかりの弱小クラブです。しかし、だからこそバスケの「原点」を見せることができると私は考えています。演出を極力純粋素朴にするシンプルなゲームだけれど、「バスケって、こういうスポーツだったよね」と感じてもらえる。そして後から振り返って、「あの頃はクラブの規模も小さくて、ただ純粋にゲームを観るという開幕だったな」とか、「あの頃はコロナで大変だったけど、みんなでバスケを見に行ったよね」「手作り感いっぱいで、あのときがあるから今があるんだな」などと思い出してもらえる。それが原点を見せるという意図です。

 もちろん、無料ならではの工夫もいろいろと考えていました。車いすバスケットの選手たちも、今はゲームができずに苦しんでいます。そんな選手たちに会場に来てもらって、車いすバスケの面白さを観客の皆さんに知ってもらうという計画がありました。また、チームのオリジナルビールである「ブロンコスエール」を私自身が売り場に立って販売しようと思っていました。1杯目は無料、2杯目からはお金を払って飲んでもらうシステムです。それから、ブロンコス(野生の馬)というチーム名にちなんで、ポニーの幼馬を飼って、観客の皆さんから名前を募ろうとも思っていました。