リスクを取ってでも人と違う道に挑む。そんな若きイノベーターたちは、どんな環境で育ってきたのか。今回は、一流講師からオンラインでレッスンを受けられる音楽教室「フォニム」を運営する宍戸光達さん。高校に入学するまではピアニストを目指していたそうです。その挑戦心はどう養われ、変化してきたのでしょうか。(聞き手/ダイヤモンド編集部論説委員・深澤 献)

幼稚園の天井に映った
ピアノの鍵盤に魅了された

――ご出身は北海道ですね。

宍戸光達・フォニム代表取締役「北海道という緩い競争環境の中で、長く“勘違い”することができたのがよかった」 Photo by Masato Kato 拡大画像表示

 札幌市内ですが手稲区という、小樽市に近い何もない辺りです。かつては手稲金山で栄えた地域ですが、閉山後は人口も減り、通っていた小学校も統廃合寸前でした。理科室の顕微鏡に「昭和22年」と書いてあったのを覚えています。

 中学校も、数学の先生が体育も教えるようなところでした。坂の上にあったので、冬場に雪が降ると、みんな四つんばいになって坂を上っていたのを思い出します。

――家族構成は?

 両親と、6歳下の妹の4人です。両親は結構、変わっているんですよね。

 母の実家は地元で金属工場を営んでいます。母は、ビートルズの狂信的なファンで、高校卒業後にビートルズに憧れて渡英したんです。1961年生まれだからリアルタイムのビートルズ世代より少し下だと思うのですが、英国で働きながら暮らしていました。

 一方、父は地元の工業高校を出て、母の実家の工場で働いていました。工場がパソコンを導入することになったとき、当時のパソコンは日本語化が不十分だったので、ちょうど帰国していた母が英語ができるということで実家に呼び戻され、手伝うようになりました。

 そこで緻密な図面を描ける工員と、英国帰りのお嬢さまが、なぜか結婚し、生まれたのが僕です。