「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命を尊重せよ)」のスローガンのもと、展開された人種差別撤廃のBLM活動の激化により、自宅が焼かれることを危惧している住人たちに、これ以上刺さる言葉はないだろうとビルは考えた。

 その下には「資本主義か社会主義か」「繁栄か貧困か」「職か失業か」と書き、あえてトランプの名前は一切書かずにビラをつくった。数百枚のビラを車に乗せ、共和党民登録されていない有権者たちの玄関先を1日8時間、ひたすら回る。

「コロナ禍でみんな家に引き籠もっているから、誰もが話し相手に飢えていて、想像以上に歓迎してくれた」とビル。シニア層の多いフロリダだけに、多くの人々が感染を危惧してマスクをしており、「トランプ支持者はマスクをしない」という通説とはかなり違った光景がそこには広がっていたという。

「どんなにリベラル・メディアがトランプを叩こうと、一般的なアメリカ市民は左派じゃない。圧倒的に中道かやや右派だ。警戒すべきは、棺桶に片足を突っ込んでいるバイデンではなく、カマラ・ハリスだ。左派の彼女が実権を握ると、経済がめちゃくちゃになる」

トランプ政権「激動の4年」
支持派、不支持派それぞれの思い

選挙後もカリフォルニア州のあちこちで見られるBLMのサイン選挙後もカリフォルニア州のあちこちで見られるBLMのサイン

 ビルが最も恐れているのは、民主党政権下で株価が下がり、税金が引き上げられ、経済が悪化していくことだ。

「株価は投資家だけの関心事じゃない。アメリカでは株価はシニア層にとって最も重要なんだ。この国のシニアは401Kで、つまり投資によってリタイア資金を貯める。だから個人の資産の額は、株価と直接連動している。トランプの4年で、私のリタイア資金は倍増した。バイデンならその逆だ。道端でリンゴを売らなくちゃならなくなる」

 トランプ大統領がフロリダで勝利すると、ビルはやっと胸をなで下ろした。だが、選挙の結果はバイデン勝利となった。

「バイデン政権下では、まず増税でカリフォルニア州の中小企業がバタバタ倒産するだろう。そうじゃなくても、すでに多くのレストランが潰れているのに」とビルは語る。ビルに米国議事堂襲撃事件についてのコメントを電話で求めたが、2週間たっても返事はまだない。

 マークとビル。2人がそれぞれの思いで生きたトランプ政権の「激動の4年」は終わり、新しい時代が始まる。