『週刊ダイヤモンド』2月6日号の第1特集は「会社の数字に強くなる!現場で役立つ会計術」です。英語やITとともにビジネスパーソンにとって“必須科目”である「会計」知識。しかし、実はがむしゃらに決算書を見ているだけでは、実践的な会計力は身につかないのです。そこで、会計クイズや実際のCEOやCFOに直接聞いた実例を交えて、本当に“現場で使える”知識を紹介します。(ダイヤモンド編集部 塙 花梨)

コロナ禍こそ、実践で役立つ
会計知識のアップデートをすべき理由


決算書が読めるだけでは危ない!本当に「現場で使える」会計力とはPhoto:PIXTA

 実は「社内での数字をどのように共有するか」で、会社の経営は天と地ほどの差がつく。通常時でもそうなのだから、コロナ禍ではより一層、“現場の数字意識”が重要になってくることは間違いない。これまで社内での数字管理を工夫してこなかった場合、コロナ禍以前の数字の共有をそのまま行っていては、いずれ大きな損失を出すことになるだろう。

『会計の世界史』の著者である公認会計士の田中靖浩氏は、社内での数字意識の低さを「赤信号で、周りも見ずに道路へ直進している状態に等しい」と述べ、警鐘を鳴らす。

 そもそも、社内で共有すべき数字である「管理会計」と、対外的に公表する数字である「財務会計」は、目的も内容も異なる。ところが、これを同一のものと見なし、区別せずに対外的な数字をそのまま社内で共有してしまっている企業やビジネスパーソンはかなり多い。

 では、管理会計と財務会計の違いとは一体何なのかというと、「社内向け」か「社外向け」かである。

 まず、財務会計とは、いわば株主のための会計なのだ。決算書に書いてある利益は、税金と配当にしか使用されない。外部へ報告する目的のための数字なのだから、社員には役に立たないのは当然だ。

 一方、管理会計は、社内で使用することを目的とした数字だ。これは単なる数字を伝える会計ではなく、社員同士の共通言語だ。経営のトップが示した数字を達成するため、社員自らが考え、必死に行動する。これが管理会計の考えであり、社外に結果を報告する財務会計とは全く違うのである。

 だからこそ、「どの数字を指標にするか」が重要で、また、経営側はその指標を用いると「社員はどのような行動を取るのか」を徹底的に想像しなければならない。そして、働く側の社員は、会社の意図をしっかり汲み取らないと、出世は叶わないだろう。