現場で役立つ会計術#14Photo:yuoak/gettyimages

「通常の業務で決算書が読めなくても何も困らない」という人や、難しい印象があり、苦手意識を持っている人も多いだろう。だが、実は決算書が読めるようになると、日々の業務でのメリットがたくさんある。特集『現場で役立つ会計術』(全17回)の#14では、日本で一番売れている会計本『世界一楽しい決算書の読み方』の著者への取材を基に、決算書そのものへの理解や、読む目的を解説していく。(ダイヤモンド編集部 塙 花梨)

決算書の勉強に苦手意識がある理由
“ざっくり理解”で十分だった

 昔から「ビジネスパーソンたるもの、決算書は読めるべきだ」と口酸っぱく言われてきた。おそらく、この記事を読んでいるあなたもご多分に漏れず、「決算書の読み方」に興味を持っているのではないだろうか。

 しかし実際、会計や決算書について解説している本や記事は山のようにあるにもかかわらず、いまだに決算書には「難しい、分かりにくい」というイメージがある。苦手意識があるという人も多いのが実情だ。

 多くの人が、決算書を勉強しようとして挫折してしまったり、何度読んでも理解できなかったりと、“決算書嫌い”になってしまう理由は二つある。

 一つは、「全てを理解しようとしているから」である。実は、一般的なビジネスパーソンが、ビジネスで活用できる会計力を身に付けたい場合、経理担当や経営者でない限りは、簿記の知識を全て理解する必要はない。あくまで決算書の中でも基本中の基本である「財務3表」さえ理解できれば、普段の仕事で活用できるのだ。しかも、財務3表ですら“ざっくり”とした理解でいい。読み方が分かれば、「数字で会社を見る感覚」が身に付き、十分仕事に生かせる。

 決算書嫌いを生むもう一つの理由は、「自分ごととして理解できていないから」だといえる。世に出ている会計入門書のほとんどは、架空の企業の財務諸表を基に解説しているものだ。だが、決算書を読む目的は、企業を分析し、具体的な手立てを考えることにある。

 架空の企業のサンプルを見て数字を追っているだけだと記憶に残りにくいが、実在する企業の決算書を見ていったらどうだろうか。実例を使えば、自分の中にあるその企業のイメージと実際の決算書を見比べ、ビジネスモデルまで読み解いてみることができる。そうすると記憶にも残りやすく、実際に決算書をビジネスで使用する際の練習にもなる。これが、決算書が読めるようになる一番の近道なのだ。

 そこで、ここからは発売直後に10万部を突破した超ベストセラー会計本『世界一楽しい決算書の読み方』の著者である大手町のランダムウォーカーへの取材を通し、「決算書を読む目的」や「決算書が読めると起こるメリット」を紹介していく。