社内で共有する数字と対外的に公表する財務会計は同一視されがちだが、実は「まったくの別物」。しかも、この指標の選び方や伝え方を間違えると会社や部署が傾くほど重大なことになるため、コロナ禍では見直しが必須だ。そこで、特集『現場で役立つ会計術』(全17回)の#1では、現場の数字力とは、一体どう身につけていけばよいのか、解説していく。(ダイヤモンド編集部 塙 花梨)
社内での数字共有ほんとうに大丈夫?
コロナ禍でこそ早急に見直すべき理由
あなたは社内で共有される数字を当たり前のものだと考え、疑わずに仕事をしてしまってはいないだろうか。あるいは、違和感があったとしても、予算制度は会社で決定しているものであり、自分が声を上げてはいけない。そんなふうに思ってはいないだろうか。
通常時であっても、社内での数字をどのように共有するかで、会社の経営は天と地ほどの差がつく。ましてや、今は未曽有のコロナ禍である。これまで社内での数字管理を工夫してこなかった場合、コロナ禍以前の数字の共有をそのまま行っていては、いずれ大きな損失を出すことになるだろう。
『会計の世界史』の著者である公認会計士の田中靖浩氏は、社内での数字意識の低さを「赤信号で、周りも見ずに道路へ直進している状態に等しい」と述べ、警鐘を鳴らす。
ぼんやりひとごとだと考えて売り上げばかりに固執していると、あなたの会社や部署は気付かぬうちに大きな危機にひんしてしまうかもしれない。世界全体が危機に直面し、不測の事態となっている今こそ、売り上げばかりに固執した“PL脳”から脱しなければならない。
社内と社外では見るべき数字が違う!
「決算書が分かればOK」は大きな勘違い
そもそも、社内で共有すべき数字である「管理会計」と、対外的に公表する数字である「財務会計」は、目的も内容も異なる。しかしながら、これを同一のものと見なし、区別せずに対外的な数字をそのまま社内で共有してしまっている日本企業が多い。そのため、もしあなたが「決算書が読めるから大丈夫」だと安心しているのなら危険だ。
では、管理会計と財務会計の違いとは一体何なのか。次ページでは、管理会計の理解と実践のこつを解説していこう。