長年、規模で他社の後塵を拝してきたEYのコンサル部門。だが、新たにデロイトの元トップがEYに「移籍」し、野心的な計画を掲げるなど台風の目となっている。さらにEYのみならず、いまコンサル業界では、かつて花形であった戦略系コンサルに対する総合系の逆襲とでもいうべき地殻変動も起きている。特集『コンサル新序列』(全8回)の#1ではコンサル業界に起きる激変を追う。(ダイヤモンド編集部 山本 輝)
トップのデロイトと続くPwC
コンサル2強に挑むEYの逆襲
「本当に伸ばす気があるんですか?」──。
2019年、EYジャパンのコンサルティング部門であるEYストラテジー・アンド・コンサルティングで現在社長を務める近藤聡氏は、当時EYの経営陣にそう詰め寄った。
それまでのEYのコンサル部門は、ビッグ4の一角という強いブランドネームを持ちながらも国内の経営は悲惨な状況だった。
規模ではデロイトトーマツコンサルティング(DTC)やPwCコンサルティングなどに水をあけられ、上位の案件には食い込めず利益率も低い。「競合としては論外」(ビッグ4系コンサル幹部)などとやゆされてしまうほどの存在だった。
実は近藤氏は、11年から18年までDTCの社長を務め、同社をビッグ4トップに押し上げた、コンサル業界で知らない人はいない重鎮だ。
デロイトを退職し、当時EYの日本全体をリードするポジションに“移籍”した近藤氏から見たEYは、和を重んじる社風はあっても、反対に成長への意欲が欠けているように映った。
例えば、成長に必要な投資についても、「予算が複数年度ではなく単年度で精算する形になっており、長期的な投資をブロックする心理的なハードルになっていた」(近藤氏)。コンサル業界全体が成長軌道を描く中、EYは向かうべき方向を描けずにいた。不足していたのは、成長に向けた長期的なビジョンだ。
かくして、近藤氏がEYに参画して以来、中心となり半年ほどかけて練り上げた成長戦略が19年の夏に始動する。
そのコードネームは、プロジェクト・ドラゴン──。
名前の通り、EYを昇り竜のごとく急成長させる、野心的な計画である。EYがコンサル業界の序列を覆す台風の目となった瞬間だ。