福利厚生サービスの提供で、10年で売上高を3倍、営業利益を4倍に伸ばしたベネフィット・ワン。特徴はBtoE(Business to Employee)のビジネスモデルで、時価総額は親会社のパソナグループを大きく上回る。特集『最強のテンバガー』(全18回)の#12では、「日本人1億2000万人会員化」で、食や美容などサービス流通のAmazonを目指すというベネフィット・ワンの白石徳生代表取締役社長に成長戦略を聞いた。(ダイヤモンド編集部 篭島裕亮)
10年で営業利益は4倍、株価は39倍
時価総額は親会社パソナの5倍以上に
1980年代後半、日本の景気が絶頂だった頃、多くの企業が社宅を充実させ、全国各地に保養所を所有するなど福利厚生サービスに力を入れて取り組んでいた。だが、バブル崩壊後は空気が一変。福利厚生サービスの自前主義から脱却して、外部の企業から調達するように変化した。
そのチャンスを生かして急成長したのが、福利厚生サービスで業界首位のベネフィット・ワンだ。直近10年の年平均増益率は13.6%で、営業利益を約4倍に増加させた。
株式市場でも評価が高く、株価は10年で39倍に上昇。時価総額は4689億円(2月22日時点)だが、これは親会社のパソナグループの802億円を大きく上回っている。
ベネフィット・ワンが展開する福利厚生サービスは旅行、オンライン学習、レストラン予約、介護などメニューが多く、1万社以上が導入している。特に大企業や公的部門に強く、NTTやJR九州なども導入している。
会員企業の個人顧客向けに展開する会員割引サービスなども含めた総会員数は、コロナ禍でも87万人増加して868万人を突破した。前期の部門別の売上高から試算すると、会員1人当たりの会費は単純平均で年間3000円弱になる。
ストック型ビジネスのため、業績が大崩れするリスクは小さい。2021年4月から中小企業にも同一労働同一賃金が導入されることも追い風になる。
ただ、気になるのは、増収増益を継続しているものの、直近2期の売上高は期初計画に届いていないこと。会員の拡大にも限界があり、注力するヘルスケア事業は計画を上回っているものの、コロナ禍が逆風となっている。海外は売上高が伸びている一方で、先行投資段階で赤字である。
果たして来期以降、以前のように2桁成長に回帰できるのか。
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