「業務スーパー」の最大の強みは商品力だ。小売りチェーンは「工場を持たない経営」が理想とされてきた中で、神戸物産は経営不振の工場を買収して再生し、大容量で低価格の独自商品を生産する道を選んだ。特集『「業務スーパー」の非常識経営』(全7回)の#4では、激安プライベートブランド商品の秘密を探る。(ダイヤモンド編集部 相馬留美)
業務スーパーのPB製造工場は
豆乳花で大ブレークしてその後倒産
JR仙台駅から車で約1時間。どこまでも続くかのようなのどかな田園風景の中に、年季の入った工場がぽつんと現れた。宮城県角田市の宮城製粉の本社だ。ここで、業務スーパーで販売されている「おとなの大盛カレー」「ぷち大福」など多数のプライベートブランド(PB)商品が製造されている。
宮城製粉はバイヤーの間では知る人ぞ知る存在だ。2000年代半ば、コンビニスイーツで爆発的にヒットした「豆乳花」を製造していたからだ。口コミで豆乳花が大ブレークしたことでコンビニエンスストアやスーパーから注文が殺到し、当時の年商は24億円にまで拡大した。
ところが豆乳花ブームが終焉すると受注は急減。過剰設備で採算が合わなくなり、09年10月に民事再生法の適用を申請した。
当時、宮城製粉の後藤浩一社長に対して、数社から事業譲渡の打診があった。ただ、三つの工場と全ての従業員を引き取るという条件をのんでくれるところはなかった。
そんな折、「神戸物産の社長が、『北海道に行く途中なのだが今から会えるか』と言っている」と管財人の弁護士から連絡があった。神戸物産についての知識は、運営する業務スーパーの名前を聞いたことがある程度。ひとまず会ってみることにすると、ひげを生やしたワイルドな男が現れた。神戸物産創業者の沼田昭二氏だった。