だが、これはファンであるために経済力を要することになり、必然的に若者のファン離れと高齢化を招きかねないものだった。

 2009年から行われている選抜総選挙も、ファンは投票権をCD購入に応じて得るシステムなので、いわばCDがAKB48メンバーを応援してふれあうという「経済活動」における「共通通貨」になった。とはいえ、このCD自体は交換できず、用が済めば無用の長物となり、廃棄問題を起こすことにもなった。

 伝統的に見れば、アイドルは透明感のあるルックスの少女が、未成熟ながら一生懸命に演じることを応援してもらう職業のことである。また、アイドルファンとは、「未成熟の一生懸命」に萌える者のことである。

 AKB48における総選挙とは、いわば「誰が一番応援してもらえるか」を争う場である。さらに言えば、投票する権利はCDという通貨によって得られるので、「誰が一番経済力のあるファンに応援してもらえるか」も重要になる。言い換えると、「ファン数の獲得」と同時に「経済力のあるファンの獲得」を争うものである以上、後者はキャバクラで行われていることとかなり近いといえるだろう。

 この競争のルールはかなり複雑だ。「誰が一番歌がうまいか」「誰が一番ダンスがうまいか」を争うのであれば、プロが審査すれば純粋に「誰がうまいかの争い」になり、プロでない者が審査をすれば「誰がうまく見せるかの争い」になるものだ。それに対して「誰が一番応援してもらえるか」という争いは、「ファンの経済力」という要素が入り、「勝因」を分析するのは困難だろう。

 AKB48を私なりに定義するなら、「CDを共通貨幣化した上で、応援される競争をファンと共に繰り広げる場」としておきたい。

ファンを熱狂させる
前田敦子の天才性

 そんな複雑な競争の場で、2009年の「AKB48 13thシングル選抜総選挙」で優勝したのが、前田敦子だった。前田はグループ結成から卒業まで中心メンバーとして活躍して、多くの楽曲でセンターを務め「絶対的エース」であり続けた。

 不思議なのは、前田敦子を一人のタレントとして見ると、抜きんでたルックスの透明感や高いスター性などが感じられないことだ。表現力や明るさに秀でているわけでもなく、むしろ暗さや無愛想さすら感じることもある。