緊急事態宣言は解除されたものの、外食業界では店舗に客足がまだ戻らない。特集『外資コンサル総力解明 7業界の生存戦略』(全12回)の#4では、外食企業が低採算体質から脱却して生き残るための戦略を、A.T.カーニーが提言する。関係者必携の業界の打撃と展望が一目で分かる「ティアシート」(B4判)付き。(構成/ダイヤモンド編集部副編集長 杉本りうこ)
400万人の雇用を支える
外食産業にコロナの痛手
外食は約400万人の雇用を支える産業だ。その産業が新型コロナウイルスの感染拡大ピーク期では、店舗の休業や大幅な営業縮小を余儀なくされた。経済活動が再開した現在も、外食企業の多くが後遺症に悩んでいる。外食企業の業績低迷、さらには経営破綻の続出を放置すれば、多くの働く人が行き場を失いかねない。外食企業の生存戦略は社会的な意義からも極めて重要だ。
(1)コロナの打撃
外食は旅行業界、ホテル業界と並んで、新型コロナウイルスの感染拡大によるネガティブインパクトが大きかった。緊急事態宣言が発令された4月の外食業界の月商は、コロナ発生以前の平時(2019年3月)に比べ、8割減に落ち込んだ。その後も5月、6月とほぼ底ばいで推移した。
特に打撃が大きかったのは、飲酒を伴うグループ利用が中心の居酒屋やディナーレストランだ。この業態の大手チェーンの4月の売上高は、前年同月比9割減少している。またファミリーレストランや定食チェーンも同6割減少した。打撃が軽微だったのはファストフードで、減少幅は同2割弱にとどまっている。店舗によってはテークアウトの利用が増えて、むしろ好調だったところもあるようだ。
業態によってコロナショックの度合いは異なるが、外食業界全体ではやはり極めて厳しい状況。企業の倒産も相次ぎ、3~4月は過去最高だった19年を上回る件数で推移した。しかも4月の倒産件数(75件、前年同月比10件増)は、実際の経営状況からすると過少に抑制されている可能性がある。なぜなら、緊急事態宣言に伴う法律事務所や裁判所の業務縮小で、法的整理手続きが滞留したからだ。
(2)構造的な問題
倒産が相次ぐ背景には、外食業界がコロナ以前から慢性的な収益力の低さと、それによる手元資金の乏しさという課題を抱えてきたことがある。収益力が比較的高い大手チェーンでも、営業利益率は2~5%前後という企業が一般的だ。