経営難に陥った外食企業が資本金を1億円以下に減資し、「中小企業化」する事例が相次いでいる。企業の信用を左右しかねない行為ではあるものの、税制上のメリットなど背に腹は代えられない事情がある。特集『外食大再編』(全8回)の#7では、減資に踏み切った外食企業の裏事情に迫る。(ダイヤモンド編集部副編集長 大矢博之)
「“税逃れ”の声があるのは分かっている」
外食15社が資本金1億円以下へ減資
「“税逃れ”という声があるのは分かっていますよ。でも、『赤信号、みんなで渡れば怖くない』とばかりに周囲もやっていて、デメリットはほとんどない」
こう語るのは、今年に入り減資を発表したある外食企業の財務担当者だ。
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い経営難に陥った外食企業が、資本金を1億円以下に減資して「中小企業化」する事例が相次いでいる。
例えば、居酒屋「庄や」を運営する大庄は2020年8月に資本金を86.3億円から1億円に減資し、今年に入ってからも「かっぱ寿司」を運営するカッパ・クリエイトが98億円から1億円に減資するなど続出中だ。ダイヤモンド編集部が調べたところ、昨春以降に資本金を1億円以下に減資すると発表した外食企業は15社に上る。
法人税法上、資本金が1億円以下であれば売上高や従業員数などの規模とは関係なく「中小法人」扱いとなり、さまざまな税制の優遇措置がある。
税制の優遇措置を目的とした減資を巡っては、15年に経営再建中のシャープが1200億円以上あった資本金を1億円に減らそうとして物議を醸した。シャープは計画撤退に追い込まれ、その後、政府は規制を強化。19年度の税制改正では、資本金が1億円以下であっても、過去3年の平均で15億円以上の所得(税務会計上の黒字)があった“大企業”については、一部の優遇措置の適用を除外した。
それでも、大企業ならば赤字でも事業活動の規模に応じて負担しなければならない法人事業税の外形標準課税が中小企業では免除されるなど、優遇措置はまだまだ残っている。
とはいえ、減資する企業は「資本政策の柔軟性を確保するため」などと表向きは説明し、税の優遇措置が狙いだという本音を隠すことが多かった。
しかし、最近は様相が変わっている。
「税負担の軽減を図るため」(カッパ・クリエイト)、「税負担の軽減による財務の健全化を図るため」(精養軒)などと、減資についての開示資料で、“節税”が目的であることを明言するようになってきた。
実際に減資をすると、どれだけの節税効果があるのか。減資に踏み切った企業の台所事情を追った。